SONY Cybershot W200 (2) 〜全部入り系

○前回はこちら。SONY Cybershot W200 (1) 〜DP1を買う前に

 さて、前回はFujifilmRICOHの3機種と、SONYのCybershot W200とを迷ったという話を書いた。今回は、その続きである。ウェブ上に流通している画像を見ている限りでは、画質はそう大きな差は無いものの、Fujifilmにフィルムメーカーならではの色へのこだわりが感じられて、一日の長がある様に思った。ハニカムセンサー特有の妙な後ボケは嫌いだが、総じて絵にメリハリが有る。Fujiの他の高級コンパクト機にはポジフィルムの再現モードが付いているとのことだが、この機種は何となくネガフィルムのREALAを思い起こすトーンである。また、顔検出だけでなくて、AFそのものも速い気がした。RICOHも機会としてのレスポンスは優れている。ただ、W200もこれらと比べると薄くて小さい割りに、画質は悪くないし、AFも普通に動く。画質やAFで大きな差が無いとすると、手振れ補正の効きの違いが意味を持ってくる。結局は、この手振れ補正の効きの差でW200を選んだようなものだ。僕のモノ選びにしては珍しく、一芸派より万能派を求めた為、薄さ・画質・AF/手振れ補正も含めた機械的性能のトータルバランスが意味を持った。しかも、付け加えだが、バランスがいいのに価格は安いのである。W300という後継機種が出るせいか、ここんとこ爆安になっていて、僕はポイント換算で2万ちょいで手に入れた。どちらかというとハイエンドの方にカテゴライズされる機種だと思うが、これはオトクである。


[NIKON D80/ Tokina AT-X M100 PRO D /100mm F5.3]

 さて、手に入れてみて実感した所だが、今回は衝動を抑えて結構事前調査した為、ほぼ購入前に思っていた所と齟齬は無い。まず画質であるが、1200万画素という超高画素機ゆえ、A4でプリントしてもなかなかの品質に見える。僕の一眼レフより高画素だから、この辺の引き伸ばしはW200の得意とする所だろう。僕は高画素機特有のパサパサした色合いとノイズが嫌いで、努めて高画素機を避けてきたが、この機種はdot by dotで拡大して見ても、それ程ひどくないし、ノイズも抑えられている。800万画素である僕のS80の方が、比べればdotあたりの解像度では優れているし、色も深く、またノイズも少ないのは間違いないが、W200は、1200万画素機の中ではFujifilmと並んで相当良い方に分類されると思う。

Sakura and Sakura
[SONY Cybershot W200/ 46mm F6.3]

 出てくる絵の傾向は、あっさりしていて、妙な彩度の高さも無い。僕は好きである。人を撮るとあっさりしすぎて、元気が無く見えるかもしれないが、風景にはいい絵作りでは無かろうか。この辺はCanonとまったく逆の傾向だ。Canonはこってりめの絵作りだから、人は健康的に写るが、風景はちょっと落ち着かない感じになる。今はNikonJPEGの色使いはこってり系になって来たが、昔はNIKONはあっさりクール系で、用途的に戦場写真とかに使われる事も多かったため、美女のCanon・死体のNIKONとかと呼ばれていたらしい。SONYはどちらかと言うと死体系だが、ポートレートというかスナップを撮らない僕には、この位の方が丁度良い。また、シャッター速度優先AEは無いが、マニュアル露出が出来て、ほぼ代替可能なのはポイントは高い。操作が面倒なので、これまで数回試しに使っただけだが、いずれ必要な時も来るだろう。


[NIKON D80/ Tokina AT-X M100 PRO D /100mm F5.3]

 次に、ポイントとなった手振れ補正の効きについてだが、これはすこぶる良い。3段分位は確実にある。暗い照明のレストランで寄りで食べ物を撮る時、或いは下からのアングルで、片手でホールドしつつ同時にシャッターを押さざるを得ない時とかも割りと一発で決まる。W200は極端に薄い筐体では無いが、それでも薄くてホールドしにくいので、手振れ補正が無ければ手ぶれ写真連発だと思うが、補正に相当救われている印象だ。ただし、シャッターにクリック感が強く、押す動きだけでブレてしまう事が結構あるので、相当遅いスローシャッターを切るときは、セルフタイマー2秒を設定して、シャッターブレを避けるのが良いだろう。手振れ補正は、カメラのオールドファンの一部からは「あんなもん要らん」と言われているし、確かに補正系の分画質が下がるというのも一理あるが、それを補って余りあるメリットがある。こういうお手軽機にとっては尚更だ。AE、AFに続く一大技術的革新だと僕は思っている。

Night Walk
[SONY Cybershot W200/ 40mm F3.2]

  • これなんぞ1/5秒、手持ちなのに、僅かなブレである。ここはM&A業界の人なら月イチで行っていてもおかしくない、某欧州系投資銀行と某大手法律事務所が入るビル。

 さて、もともとDP1のサブでという思い付きで買ったカメラだが、なかなかどうして薄くて便利なので、今のところ持ち出す頻度が最も高いカメラになっている。デカいS80は気合入れていい絵が撮りたい時、HD2は動画も撮りたい時、そういえば名前の似ているPentax W20というのも持っていたが、これは防水デジカメなのでアウトドアスポーツする時、という風に、他の手持ちカメラは使うシーンが限定されてきた。オールラウンドに日常風景を、という事になるとW200が一番使い良いのである。JPEG撮って出しの品質が安定しているのも好感が持てる。良い絵が安定的に撮れるカメラが気軽に持ち歩けるサイズ・重さってのは、有り難い事である。DP1みたいな癖が有って、使いこなすのも大変だが、ハマると凄い絵を出すカメラからは本当に対極で、組み合わせて使うにはドンピシャかも知れない。ランチア・デルタとマツダ・アテンザの2台持ちです、みたいなもんだろうか。道具として偏愛し、ハレの日に持ち出すのはランチアかも知れないが、毎日乗るクルマでは無い。日常を豊かに愉しむなら、アテンザが向いている。そういう意味では、SONYってのは昔から日本メーカーとしてあるべき信頼性のレベルをクリアした上で、面白い機能を載せて出してくるメーカーだったから、W200がバランス良くても特に意外感は無いのだが、DP1みたいな変態高額商品が日本メーカーから出たってのは結構意外である。これが売れて商売として成り立つなら、ある種日本も文明が一つ成熟したのかも知れない。W200は、DP1みたいな変態っぽさは全く無いが、極めて良く出来たカメラなのは間違いないし、大多数にはこちらの方が全くもってオススメできるだろう。

Hanami 2008
[SONY Cybershot W200/ 35mm F5.6]

  • 千葉の泉自然公園にて。見事な桜でした。後ボケがうるさいのはコンパクト機の宿命で致し方なし。