SONY Cybershot W200 (1) 〜DP1を買う前に

 今は当たり前だが2008年3月である。この3月、デジタルスチルカメラ好き、或いはその中に結構な割合で含まれるカリっとした解像度至上主義の人を最も興奮させ、かつ大変な評判となっている機種が、DP1であるのは疑いないだろう。カメラを意識的に触った事が無い人であれば、間違いなく知らないであろうSIGMAというメーカー製である。知らない方の為に、一応書いておくと、SIGMAは日本のメーカーで、一眼レフの各メーカーの互換レンズを出しているレンズメーカーだ。
 僕もDP1が吐き出す絵の自然な解像感、彩度が高く無い渋めの色合いながら、なぜか不思議に強い透明感に魅せられて、このコンパクトカメラに、一眼レフ並みの8-9万円というお値段を払う積もりにすっかりなっている。スペック的には、この1,000万画素オーバー時代において画素数は携帯カメラにも劣る僅か465万画素、手振れ補正無し、ズーム無しの単焦点、RAWで撮ったら一枚撮ると数秒待たされるという、とんでもない代物であるにも関わらずである。DP1機械的性能は普通以下だが、絵はコンパクトデジカメの比では無く、一眼レフと比べてすら勝っている部分があるからだ。

○SIGMA DP1オフィシャル画像サンプル *デジカメの画質に興味あれば

 すっかり買う積もりなのに、まだ買ってないのは、さすがに初期ロットは避けようという事と、ウェブサイトで見る限り周辺の緑かぶりが有って、これの補正がハードでもソフトでもどう為されるか、見極めたいという事、及びクローズアップレンズとかスピードライトとかのアクセサリーが貧弱なので、DP1対応のものが増えるのを待っているからである。

Katakuri
[SONY Cybershot W200/ 105mm F5.5]

  • カタクリの花がニリンソウと共に咲いた

 そんな訳でDP1を買うことは決めているのだが、こいつは28mm単焦点で、望遠はおろか、クローズアップレンズでも付けないと、被写体に寄った撮影すら出来ない。1台だけでは撮れない写真も多いだろう。よって2台体制で組み合わせを考えて携行すれば良いのだが、これが考えどころである。手持ちのCanon Powershot S80とか、SANYO Xacti DMX-HD2とかは性能も良くて気に入っているが、如何せんデカくて、2台持つならそもそも一眼レフ1台持ち出すのとサイズや重さが変わらなくなってしまう。薄型のコンパクトデジカメというのは、画質や性能の犠牲の上に成り立っているに過ぎず、僕はこれまで薄型に手を伸ばさなかった。従って、持っているコンパクトデジカメは軒並みデカいのである。勿論、我慢してデカいの2台持ち出すという選択肢も有り得るのだが、ここは手振れ補正の付いているコンパクトデジカメを持っていない事もあり、組み合わせで使うだけでなくて、普段持ち歩いてパチパチ取れるお手軽な1台が有っても良いかと思って、今回は薄型・コンパクト機を色々と調べてみた。

Occupy the sky
[SONY Cybershot W200/ 35mm F8]

 さて、手振れ補正と言えばPanasonicという事で、こちらも色々情報収集して見たが、その代表的機種であるFX-35は1/2.33インチサイズのイメージセンサーである。1/2.33型や1/2.5型など小型イメージセンサーは、薄型系の商品に多く採用されているが、1画素辺りのセンサーサイズがビハインドしている為、解像感に乏しく、高感度に弱い。ISO6400までの高感度モード搭載、とか勇ましく宣伝はされているが、見るにISO400で既に使い物になっていない。ISO200迄は何とか許容範囲だが、400からは強烈なノイズリダクション処理で無残に細部が溶けてしまっている。しかもその割りにカラーノイズが消えていない。この1/2.33型機の高感度のヤバさは他のメーカーの機種でも同じである。薄型で有名なCASIOのEXLIMも大体センサーはこのサイズで、絵の傾向は同様である。

 一方で、それよりもワンサイズ大きい1/1.6〜1.8位のセンサーサイズの機種は、全般に何とかISO400でも見れる絵になっている。勿論、ISO400だとノイズは多いし、細部は溶けだしてはいるが、程度問題で僕には我慢できる範疇だと感じられる。1/1.6〜1.8型のクラスだと、FujifilmのF100fd、F50fdや、RICOHGX100辺りが最後まで候補に残った。F100fdはラティチュードの広さ(僕はダイナミックレンジと同じ意味で使っているが、画像の中で一番明るいところと同じく暗いところがつぶれずに済む光量の範囲の事である)、F50fdは今時珍しい本格的絞り羽根の搭載によって可能になった豊富なマニュアル露出機能、GX100はデザインも含めた完成度の高さがそれぞれ魅力的だった。

Waiting for Spring
[SONY Cybershot W200/ 35mm F2.8]

 特にFujifilmの2台はデザインはダサめだが、中身はなかなか小さいボディの割りに良く出来ている。F100fdは、2段分増えたワイドラティチュードがキラーアプリケーションである。デジタルイメージセンサーはフィルムと比べるとラティチュードが狭い為、よく空と暗めの被写体を入れて撮る僕にはコンパクト機は鬼門であった。普通のコンパクト機だと、空を青くすると被写体は黒くツブれてシルエットと化し、被写体を明るくして階調性を保つと、空が白くトンでしまうのだ。F100fdは、ここが若干改善している模様で、明部から暗部まで、比較的階調を保つ。また、F50fdは一世代前だが、シャッター速度優先AEがあるのが嬉しい。コンパクトデジカメだと、絞ると速攻小絞りボケが発生するし、そもそも被写界深度がめっちゃ深いので、余り絞り優先AEを使わないが、例えば海外の疾走するボロワゴンの中から外の風景を撮る時は、シャッター速度1/500秒位に設定してバッチリ風景の動きを止めたいし、ありがちな表現ながら滝や渓流はシャッター速度を遅くして、水を白い線で写したいので、シャッター速度優先AEは有った方が良い。

 ただ、これら3機種が共通して引っ掛かったのは、手振れ補正がCCDシフト式である事である。電子式というある種まがいものを除くと、手振れ補正はCCDシフト式とレンズシフト式があるが、コンパクト機では明らかにレンズシフト式の方が効きが良い。これは覚えておいても損は無いと思う。手振れ補正というのは、要はブレた時に、それを打ち消すものだが、それをイメージセンサーをブレた方に動かして像を救うのがCCDシフト式、レンズを動かして補正し、センサーには動いていない像を届けるのがレンズシフト式である。この2つを比較すると、一眼レフの世界では、かつてはレンズシフト式の方が効きが良かったが、最近出たオリンパスのE-3というCCDシフト式の機種の出来が良く、今はどちらとも言えないレベルになったと思う。一方で、コンパクト機の世界はと言うと、レンズシフト式にまだ分があるのである。個人的な感触からして、CCDシフト式の3機種は1段程度の補正、レンズシフト式だと3段分位、という印象を持っている。簡単に言えば、CCDシフト式よりも、レンズシフト式の方が、4倍長いシャッタースピードでも同じブレ確率、という事である。コンパクトは軽くて持ちにくく、そもそもブレやすいものだから、この差は馬鹿には出来ない。

Underground
[SONY Cybershot W200/ 35mm F2.8]

 上記3機種と横一線で検討していたのが、SONYのCybershot W200という機種である。長くなったので、比較感やレビューについては、次回にまとめようと思う。

○続きはこちら。SONY Cybershot W200 (2) 〜全部入り系