D700 by NIKON 発表!

 待ち望んだカメラ、D700が本日13時に発表され、速攻で有名量販店で予約した。そしたら、何とこの大きなお店で2番目の予約者だった様である。どんだけカメラオタク?という感じだ。対応してくれた店員さんはニコン担当とのことだが、ニコン担当でもこのカメラの存在が正式に知らされたのは一昨日だったとか。それまでは海外サイト発の噂がネットで5日前位から先行し、問い詰めたら一昨日になってようやくニコンの営業がゲロったらしい。パンフレットとかが来たのも今朝だったと言っていた。ついでに、D3XとD90は秋のフォトキナですよ、と気になる一言を漏らしていた。そこまでニコンの営業が銀座界隈でゲロったのだろうか。

 あんまりデジタル一眼レフに詳しく無い方に解説をすると、今日予約したNIKON D700というのは、一般的に用いられるAPS-Cサイズ、つまりフィルムの半分の大きさのセンサーでは無くて、フルサイズと呼ばれるフィルムと同じサイズの大きなセンサーを積んだ、NIKONとしては2番目の機種である。最初の機種は昨年出たD3で、これは秒速9コマという高速連射とISO6400まで常用可能というスペックを誇る、どちらかというとスポーツや報道用途のプロ向け機種だ。D700はこのD3と同じ1200万画素のNIKON開発のセンサーを積んでいるが、要はD3の一部機能を削って軽くしたハイアマチュア向けの機種である。また、秋に出ると言われるD3Xというのは、SONYが発表している2400万画素という超高精細なフルサイズセンサーを積むとされるプロ向け機種で、データ量が大きいため連射には向かないが、雑誌やポスターなど高解像度な絵が必要な用途向けだ。D90は僕が今使っているD80の後継機種とされ、1200万画素のAPS-Cサイズセンサーを積む中級機である。NIKONは、これ以外にもD300というAPS-Cサイズでは最高峰の機種と、D60D40という同じくAPS-Cサイズのエントリー機をリリースしている。
 センサーがフルサイズとAPS-Cサイズとで違いがあるかだが、ざっくり言って、

  • フルサイズ:風景とか広い範囲を撮るのに向き、室内・夜間など暗い場面に強く、背景がよりボカして撮ることが可能で、色の階調性が豊か
  • APS-Cサイズ:望遠に向いており、画像の隅々までクリアに均一な光量で写り、カメラやレンズを小さく軽く設計可能で、フルサイズ用レンズも使えるためレンズの選択肢が多い

という特徴があり、一長一短である。フルサイズのセンサーは、大きい分だけ原価も高く、工程が複雑な為に良品率が低くなって、ハイコストである為、高級機で無いと採用されず、エントリークラスは逆にコストが安いAPS-Cサイズのセンサー搭載機種しか無いが、この2つの規格の間に何か根本的な優劣がある訳では無い。僕も、フルサイズのD700を買っても、APS-CD80は併用する積もりである(ついでに言えば銀塩のF100も)。5月にスペインでサッカーをD80+VR Nikkor 70-300mmという計1.3kg強の機材で撮ったが、これをD700で同じ位の焦点距離のレンズを持って行くと2.2kgとかになってしまう。旅行にはちょいときつい重さだ。


○D700商品サイト /ニコンイメージング

 前述の量販店の店員さんとの話に戻るが、ずっと噂はD3XとD90がいつ出るかと先行しており、D700はここ5日位で急に明るみに出てリリースに至った機種である。ネットに流れる噂に踊らされるとD700の登場には意外感はあるが、冷静に考えたら戦略的にはオーソドックスな話である。イメージセンサーはデジカメにとって最大のキーデバイスだが、内製化できているのは一眼レフではCanonSONYだけである。NIKONは、ずっとSONY製を使っていて、汎用品を使う自由度の低さと、何年かは前には確実に存在したCanon製との性能のギャップに大分苦しみ、実際デジタルになってもうNIKONCanonには追いつけない、という意見が主流であった。よって、NIKONにとってみると、今後デジタル一眼レフで生き残って行くにはやはり自社センサーが必須という考えに傾くのは自然だし、実際Canonに次ぐシェアをNIKONは当時でも持っており、自社需要でも結構な量になるから開発はし易い。そこで、D2Hという機種でNIKONは初めて自社開発のセンサーを世に問うたのだが、これはボロカスに叩かれる結果に終わり、D3でようやく自社センサーに一定の評価が得られることになった。
 上記の流れなら、次に早く出したいのはSONY製センサーを積むD3XやD90では無く、D3よりもマス寄りで量がはけて一個あたりセンサーコストが下げられるD700であるのは自然の成り行きである。高価なD3で開発コストをまず回収し、次に数が出るD700で一個あたりコストを当初より引き下げて、価格低下が進むD3の収益性も一挙に改善させたのだろう。
 NIKONとして、次に考えるのは、更に量の出る主戦場たるD300/D90の後継機種あたりにAPS-Cサイズの自社センサーを載せて、徐々に自社センサーに切り替えていくことだろう。NIKONの今のセンサーは、あくまで自社「開発」であって、コストが見合わないから生産はしていないと思われるが、普及機まで自社センサーが載るなら、その時点から自社生産がコスト的に視野に入ってくる可能性がある。最初は生産は外注で製品をリリースし、ロットが出てきたら自社生産に切り替えて、コストを下げていく、というのは他の製造業ではよくある手法だから、多分そういう意図もあるのだろう。ただ、ずぶの素人がCMOSの生産に乗り出すのはそう簡単なことでは無いし、Foveonにしても「開発」はしても「生産」はしておらず、AMDの例を見ても半導体は設計と生産が分離するのも一般的だから、せいぜいファウンダリーとJV作るとか、その位の折衷的アプローチが妥当だと思われる。
 話は変わるが、D3XとD90が本当に秋に出れば、D3X・D3・D700D300D90D60D40となんと7機種のラインアップをNIKONは揃える事になる。かつて、高級オーディオが家電化する中で、幾多のメーカーが家電とデジタルの製品サイクルの速さについていけずに消え去り、一部の巨大化して家電型ビジネスに適合した専業メーカーとニッチの高級メーカーに分かれていったが、一眼レフもいずれそうなるだろう、とブログに書いたが、

○2006-4-11 /NIKON D50

NIKONは何とか、デジタルの製品サイクルに適合した様だ。また、消費者の嗜好が多様化した一方で、生産技術の進歩及び、SKUが多少多くてもあらゆる機種を陳列できるネット販売とヤマダ電機に代表される大規模量販店における販売割合の増加で、多品種少量生産がかつて程非効率では無くなり、収益性を落とさずにラインアップを増やせる様になって来ている可能性もあると思う。商売柄、消費財の会社の分析をすることもあるので、原則SKUは増やせば増やす程、ライン切り替え多発による生産性の低下、在庫のロス、店頭での機会損失、宣伝面でのクリティカルマスへの未到達、1SKU当たりの売り上げ減による棚落ち等のリスクが増え、収益性は落ちるものであって、ラインアップの増加=悪、という固定観念がある。しかし、CanonEOS Kiss Digitalの様なシェア20%のプロダクトを持たないNIKONが多様なラインアップでシェアを確保して、かつ高い収益性を維持していることを見るに、デジタル家電においては、違うゲームが成立しつつあるのかもしれない。
 また、趣味の商品からマスの商品になるに連れて、マーケティングも重要になる。Canonはもとより家電やデジタルを知る会社だが、α7000で一時シェア1位だったミノルタは、デジタル製品開発の遅れが祟って、家電メーカーであるSONYに事業を既に売却してしまった。その後、SONYはラインアップを4機種(国内は3機種)にまで増やして、カメラオタクからすると、従来的視点におけるスペックではどの機種も抜きん出た箇所が無いにも関わらず、判りやすいライブビューやボディ内手ぶれ補正といったKey Featureを基に消費者へのメッセージを構築して、昨年の4.2%のシェアを今年3-4月には10.6%まで躍進させている。

○業界地図を塗り替える? デジタル一眼レフ市場でソニーが逆襲 /IT Media

 ライブビュー自体は、オリンパスE-330で2006年に世界に先駆けて実現し、E-510でライブビューと手ぶれ補正を両立させていたが、SONYとのシェアは大分開いた。オリンパスのブランド力がSONYに劣っているから、と判断するのは早計で、BCNを見ていると、一眼レフよりもよりブランド力が左右するマスプロダクトの色彩が濃いコンパクトデジカメの分野で、新年度に入ってからはオリンパスが4位、SONYが5位なのである。要は、コンパクトにおけるオリンパスμ1020の様に、コンパクトな7倍ズームという「他には余り無く」かつ「判りやすい」特徴を浅田真央というキャラクターでうまく表現した様な製品が、一眼レフには無かったし、コンパクトデジカメで11機種を展開する一方で一眼レフはフラッグシップのE-3以外は小型が売りの機種が2つとラインアップが少なくかつ偏っていた、という事なのだろう。オリンパスHOYA(旧PENTAX)、フジフィルムといった非家電系のメーカーが、ここからどうNIKONSONYをキャッチアップするのか、或いはオーディオの例に倣って一部は討ち死にしてしまうのか、そこはナリチュウである。
 さて、最後にブログの更新が、また久しく空いてしまったが、それもこれも5月に友人の結婚式参列の為にスペインはバスクに飛び、そのことを書こう書こうと思いつつも、写真をまとめたりする時間ときっかけが無かったからである。が、D700は思わず書く順番をすっ飛ばす様な出来事であった。D700と縦グリップ、及び新型のストロボをセットで予約したが、合計で40万円也。財布の中身もすっ飛ばす勢いである。

Moving
[NIKON D80 /VR Nikkor 18-200mm F3.5-5.6]

  • 西アフリカはマリ、バニ川のほとり。馬で引越だ。