シャープに戻れない理由

 10万近くしたiPhoneが水没した。今は大量のシリカゲルぶち込んだ調理用密閉タッパーの中で養生している。AppleCare Protection Planは、水没をサポートしないそうだから、これで復活しないとまた6万円の余がかかるそうである。携帯を水没させる間抜けな人の割合は、時代によってそうは変遷しないと思われるので、大数の法則を適用し、追加費用で水没保険を作っておけばアップル/Softbankにとってはビジネスチャンスになり、顧客満足度も向上すると思われるのに、これをしないのは何故であろう。
 しかも、こういう数が出る電子ガジェットは、生産設備の減価償却ムーアの法則による各種半導体チップのコスト低下によって、時間が経つと製造コストが顕著に低下するものである。保険料の設定時は、その時点の代替機の時価を用いて計算しておき、将来的な水没の時に、コスト逓減後の代替機を渡せば、更にサヤが抜けて儲かる気もする。
 それはさておき、iPhoneが無くなって困ったかというと、ウェブとGMAILをスムースに見れなくなった位で、実はあんまり困っていない。本ちゃんの携帯である、Softbank 920Pが無くなった時の困り具合と比べるとかわいいもんである。920Pを一度、タクシーに置き忘れた時は、いかに普段少額決済をモバイルSUICAに頼っているかと、あと日常生活の記録に920Pのカメラを使っているかを痛感した。iPhoneにもカメラは付いているが、ピンが来たときの画質は悪くはないものの、寄れないし無限遠も出ないという、おもちゃみたいな代物であるから、余り使っていない。
Starship
[Softbank mobile 920P /40mm F2.8]

  • どこぞのレストランで上を見上げて。宇宙船みたいな造型であると後から思った。

 一方で920Pに不満が無いかというと、これは結構ある。PCサイトブラウジングがおもちゃ以下なのは、iPhoneで補うとしても、僕にとって致命的なのは、電話にミュート機能が付いていない事である。僕は今までシャープの携帯を使ってきて、シャープの携帯には必ずミュートが付いていたので、パナに機種変した当初はびっくりしてしまった。ただ、携帯を買い換える時に、軽く「価格.com」や「2ちゃんの機種スレ」をチェックするのは、Web2.0時代のある種マナーみたいなもんだが、寡聞にしてミュートが重要だという人を、これらのサイトで見た事が無いのも事実である。なぜ、僕にとってミュートが大事かというと、これは仕事でこの携帯を使う時があるからである。
 グループでプロジェクトを回したり、地理的に離れた拠点の人と限られた時間軸の中で共同作業したりする仕事だと、ちょっとした相談事に一々face to faceで会ってられないので、必然的にテレコンとかテレカンとか呼ばれる、電話会議が多くなる。昨今流行らないグローバル投資銀行とか、弁護士とか、経営コンサルタントとかの間では、夜な夜な開かれていると言っても過言ではない。関係する5-6人が電話にのった上で、メールで資料送って、それを基にこちらからブリーフィングしたり、プレゼン受けたり、作業指示出したり、質問受けたり、相談したりする訳だ。電話会議は、得てして海外とコミュニケーションする為に夜間だったり、休日集まる程でも無い課題を済ます為に土日だったりすることが多く、結構タクシーでの移動中とか、旅先とか、食事中とか、いまいちな場所・時間に起きることが多かったりする。いつぞやは、どうしても時間が合わず、法事が終わった後の親族集まっての食事の時に、こそこそ片隅で会議していた事があり、村八分の寸前であった。
sanpo
[Softbank mobile 920P /40mm F2.8]

  • ぶらぶら残業飯食べに出かけた時に撮った風景。クルマのテールランプが彩って、意外と都市はカラフルなものだ。光がにじんでしまっているのは、携帯カメラでは已む無し。

 それで、電話会議には、自分でぎゃんぎゃん発言するものもあれば、とりあえず聞いてるだけ、というのも有る。空いている時間の電話会議なら、いずれにせよ集中するのだが、いまいちな時間に入り、他ごとがある時の電話会議であれば、2つの事を同時にせねばならない。聞いてるだけの会議なら、答えは簡単で、周りで法事でポクポク木魚が鳴ってたり、飲み会で周りが王様ゲームをしてたりしたら、電話はミュートにして聞くに専念しつつ、王様ゲームに参加すれば良い。また、発言が必要とされる会議の場合でも、聞いてる時は、ミュートでイヤホン入れて自分の30%を聞く方に配分し、残りの70%は法事に参加させて、発言のタイミングが来たら、おもむろに座を外して、静かなところでミュート解除して話す、という風にすれば、両方のイベントに参加可能である。ミュートが無いと、電話のマイクを手で押さえたりとか、曲芸を要求されるか、或いは他ごとを無視せざるを得ない。電話会議は、結構長いものも多くて、よく1時間とかかかるため、電池に厳しいスマートフォンiPhoneでは無く、電話としての機能に優れる普通の携帯を使うケースが多いから、こういう悩みを持つことになる。
 前振りがとっても長くなったが、要はパナの携帯から仕事を考えると、シャープに戻したいというのが足元の状況である。だったら戻せばいいじゃん、と簡単にならないのは、一つにシャープの携帯は、カメラの画質がやばいからである。前にも述べた通り、携帯に求めるのは、モバイルSUICAと写真なので、カメラは重要である。前使っていた904SHというシャープの携帯は、ハマると一昔前のコンデジに迫る素晴らしい画質で、実に気に入っていたのだが、最近のシャープの携帯の画質は褒められたものでは無い。それは、主に撮像センサーをCCDからCMOSに変更したのと、薄型化を追求してしょぼいレンズしか積めなくなったからと思われる。携帯関連のサイトは数あれど、携帯カメラの画質評価を継続的に行っているのは、多分ITmediaの「携帯カメラでこう遊べ」位しか無いと思うが、そこでの掲載画像を見ても一目瞭然である。


  • 出典:ITmedia

○荻窪圭の携帯カメラでこう遊べ/ITmedia

 これは、それぞれ画素数が違う為、最大公約数を取って、長辺が1024ピクセルになる様に縮小した後、それを等倍で切り出したものである。色合いや露出の違いは置いておくとして、一番下のSoftbank 904SHと比べて、同じシャープ製だが、真ん中のDocomo SH905iが相当まずい画質なのは見て取れるのでは無いだろうか。違いは左下の茂みの部分で、ディテールのシャープさに雲泥の差がある。また、左上の枝はSH905iは派手に紫色に色ズレしてしまっており、大きく画質を低下させている。この2機種は同じ300万画素なのに、これほど差があるのである。画質の良い904SHは2006年春モデルで、画質に劣るSH905iは2007年秋モデルなので、画質的には時間が経過して退化したことになる。また、僕のSoftbank 920Pとほぼ同じカメラを搭載していると思しき、一番上のDocomo P905iは細かい部分に怪しさは残るが、CMOS機としては健闘していると思う。このエントリの他の写真は、920Pで撮ったもので、ウェブサイトに載せる程度の使用であれば、まずまずの画質では無いだろうか。他社と比べても、今現在のパナの上位機種は、デジカメブランドを付したSONYとかCASIOの携帯と並んで画質ではちょっと抜きん出ていて、次いでNECという感じだと思う。
 ミュートを考えると、シャープに戻したい気はマウンテンマウンテンなれど、それはカメラ的には一番上のP905i相当の画質から真ん中のSH905i相当の画質に落とすことを意味する。iPhoneの相棒に求める機能は、モバイルSUICAと携帯カメラだが、その片一方のクオリティが、相当低下するのだ。たかが携帯の機種選択ではあるが、ものすごく大きく考えれば、仕事のしやすさを取るか、パチパチ写真撮る満足を取るか、結構深遠なワークライフバランスの問題でもある。と言うわけで、そろそろ発表になりそうな、ソフバン秋冬モデルには、「カメラ画質が向上したシャープ」or「ミュート機能が付いたパナ」のどちらかを期待したい。テクノロジーワークライフバランスを解決するのである。

Nature in the city at night
[Softbank mobile 920P /40mm F2.8]

  • やっぱりパナの携帯は、夜でも、強い光源さえ無ければ、それなりに綺麗に撮れるので良い。細かいこと言わなければノイズも少なめ。