レッスン備忘録

 最近よくゴルフに行っている。一定の量的充実のお陰か、ようやく94が出て、アンダー100組の仲間入りが果たせた。始めたのは6年ほど前だが、Golf Digest Onlineのスコア管理を見る限り、ずっと年3-4回みたいなペースだったので、上達する筈も無かった。昨年の今頃は特にスランプに陥っており、まともにボールに当たらないわ、当たっても7番アイアンで120ヤードとか、女性並みの飛距離だわで、正直あんまり面白く無かったのも事実である。僕は178cmに57kgとか、超スキニー体型で筋力も無いし、鍛える気もないので、飛ばないのは仕方が無いが、2回に1回以上をダフったりチョロったりで、50ヤードを刻むゴルフでは面白い筈がない。
 それが、昨年の11月に宮崎はフェニックスカントリークラブにゴルフ合宿を行ったのが僕にとっての転機となった。フェニックスには、デビット・デュバル・ゴルフアカデミー(今はデュバルが絶不調のせいか、フェニックスゴルフアカデミーと改称)という、芝の上から打てる実に充実した練習施設がある。そこはスイングをスローモーションビデオに撮ってくれ、それをレッスンプロが見てくれるのだが、一言二言のアドバイスで嘘のようにボールにアイアンが当たる様になった。要は、飛距離コンプレックスが有るのか、目一杯体をテークバックでねじり過ぎで、ねじり過ぎなので、インパクト時の再現性が悪く、これがボールに当たらない原因とのこと。また、ねじりやすくする為に自然に右足が開いており、これが諸悪の根源であった。そこで右足をスクエアに構え、それで体が自然に回せる所迄で捻転は止める様にした上、後は当時の流行だが、フックグリップに換えた所、いきなりボールに当たり出し、僕は狐につままれた様な気分になった。
Amagi Highland
[Panasonic LUMIX LX3 /44mm F3.5]

  • 天城高原ゴルフコース。井上誠一設計の難コースな上、山岳コースなのに吹きっさらしである。この日は低気圧接近の暴風下で、全英オープンの様な、風を読んで、ボールは転がす、我慢のゴルフを強いられた。このホールでは谷越えにも関わらず、右後ろへの猛烈なアゲンスト。

 その後数週間して、友人が何人も会員になっている千葉のイーグルレイクでラウンドレッスンを受けた。ここはアメリカンスタイルのカジュアルなゴルフ場だが、練習施設も研修生の方も大変良くて、アスレティックなゴルファーにもウケが良いと思う。ここでは、僕の実力では手首を使うのは時期尚早で、まずは手首を固定したボールストライキングの向上をアドバイスされた。当たり前の話ながら、可動部を減らしたら再現性が高まり、更にボールにちゃんと当たる様になった。飛距離も何故か伸びたと思う。結局、このインパクトの再現性を高めることが、上達へのキーワードになった。
 ちなみにこの頃、スイングスピード測定器のGST-2を買って、自分のヘッドスピードを測ってみたのだが、ドライバーで39-40m/sと人並み以下、飛距離はドライバーで210ヤード、7アイアンは多少伸びて130ヤード、スコアは120前後という感じだった。ただ、前の様に7アイアンが、ふわっと上がり、かつランも出る死んだ様なボールでは無く、スピンがかかって途中から勢いよく上に上がってきゅっと止まる球筋に変わり、変化は感じられた。
 この辺りからゴルフが面白くなってきて、家がある代官山のK'sアイランド・ゴルフアカデミーというスクールに入会し、暇な土日には習う様にした。ここもフェニックスと同様、ビデオにスイングを録画し、その場でアドバイスを受けるのだが、会員は、家に帰った後もスクールのウェブサイトでそのスイングとアドバイスをダウンロードして再チェックできる。デジタル時代ならではの教育メソッドである。僕は主に平野茂さんという、たまに雑誌に出てくるレッスンプロの方に習ったが、ポイントは、下半身が動かない手打ちになっていたので、左足への体重移動・体の回転を意識することと、オンプレーンで振ることであった。スイングプレーンとは、ゴルファーを後ろから見て、ボールと肩を結ぶ線のことで、この線上でヘッドがテイクバックも振る時も動くのが、最短距離を直線で結ぶ形となって一番力の効率が良い。このスイングプレーン上をうまくヘッドが動いているのが、オンプレーンである。オンプレーンで振ることによって、フォローが振り切れる様になったし、下半身の動きが無かった頃は、インパクト前後で行き場を無くした上半身はスピードを失いつつ上に伸び上がって飛距離をロスしていたのが、下半身を回すことによって、スムーズに上半身も回転する様になり、ヘッドスピードが上がった。この頃で、ヘッドスピードは42-43m/s程度に伸び、人並みを脱出できた。7アイアンが140ヤード程度まで飛ぶ様になった上、ボールもゆるいドロー回転になり、スライサー脱出で喜んだものである。
Taiheiyo Mashiko
[Panasonic LUMIX LX3 /60mm F4.0]

  • 太平洋クラブ&アソシエイツ益子コース。なかなか美しい林間コースで、木も成長している為、結構枝が張っていて、これがハザードになる。

 ここまで来ると欲が出るものである。多分、スコアだけ伸ばそうとすれば、このままスイングを固めてアプローチの練習でもすれば、ある程度早くスコアが伸びると思ったが、その前に出来るだけヘッドスピードが上げられないかと言う事で、色んな試行錯誤を試みた。この欲のせいで、春くらいはさんざんな目に遭ったのだが。最初は、よくトップからのスイング始動時はグリップエンドをボールに突き刺す様に下ろす、乃至は右ポケットにグリップエンドを入れる様に下ろすというが、これを試していた。この方法は要は、手首のタメを作れということである。ヘッドやクラブが腕の動きより遅れて始動し、インパクト前後で遅れて来たヘッドが加速しながら腕の回転を追い抜いていけば、クラブと腕が同調するよりヘッドスピードは上がる。これを一般に「タメ」というのだが、正直この方法でタメを作ると、僕は方向性が定まらなかった。よって、プッシュスライスを春先から量産し、2打目は常に隣のコースからという状況で、少々の林越えのショットには動じなくなった。
 また、右足を蹴って、右膝を左に押し込んでいく、ドラコンプロ推奨の方法も試したが、これもイマイチタイミングが取れず、スウェーしてのスライス量産で、なかなか身につかず。加えて、クラブの性能でヘッドスピードが上がるかもと思って、ランバックスXというシャフトで長尺クラブを作ってみたのが傷口を更に広げてしまった。自分ではボディターン系だと思っていたので、癖がないと言われる中調子のランバックスXを選んだのだが、スイング改造が全般にスライスする方向に行ってるのに、「長尺」「粘り系のシャフト」という更につかまらない要因追加のクラブを作ったもんだから、ますます右に行くことになった。一時期のドロー回転はどこへやら、初心者の時の様なブーメランスライスに悩まされる羽目となった。
 その悪循環の一つの転機になったのが、「ゴルフ上達のカギを握る「超」ウェッジワーク」という本である。余りにティーショットがイケてないので、アプローチでスコアまとめないといけない、という問題意識で買ったのだが、手首を使うコックは全てのスイングに極めて重要であって、正しいコックとは右手の親指を立てる様に行うのではなく、左手の拇指丘を押し込んで行い、テークバックの時に、腕が正面から見て9時を指す時にクラブは12時を指す位に直角に立てるべし、という本のメッセージは一つの開眼になった。最初はウェッジの練習でこれを意識していたが、ドライバーやアイアンでもこれを意識して、きちんとコックさせると、手首がタメられるのである。振り下ろした時、正面から見て腕が9時、つまりハーフウェイダウンの時に、クラブは1時半位を指す位にクラブヘッドが遅れるのがプロのスイングだが、コックを意識することで、かなりそれに近い形が作れる様になった。これによってヘッドがインパクト直前に走る様になり、ヘッドスピードが45-46m/s前後に伸びた。調子が良いと48m/sが出る時もある。7アイアンでも160ヤードが打てる様になった。1年前は120ヤードがせいぜいで、この間筋トレはしていないから、飛ばすに筋力は不要なことがよく判る。

[Panasonic LUMIX LX3 /32mm F2.2]

  • 証拠写真。ヘッドスピードの割に距離が出てないのは、レンジボールのせいだと思う。ヘッドはイオンスポーツのGIGA HS-781、シャフトはランバックス4X07-Sフレックス。今は一つ前のクリーブランド ハイボアXL9.5+マッハラインPROTO5350-Sフレックスに戻している。振動数260超の硬いクラブで丁度良くなるとはかつては想像すら出来なかった。

 後は、トップの位置が安定しないことで、これで球筋がばらついていたのだが、ウェッジと同じ様に、テークバックで腕が9時の時にクラブを12時に立て、コックを作ってから、手首は固めつつ、そのまま肩を首の下に入れる様に大きく回す様にしたら、ある程度トップの位置も高く、安定させることが出来た。また、脇を締めて、左上腕は胸を掠める様に上げることを意識したことも、トップを毎回同じ位置に持ってくことに貢献したと思う。スイングの軌道は手首のコックの形、その開始位置たるトップの位置は肩と脇で作ったことで、スイングの再現性が飛躍的に高まったのだろう。
 この時期は練習が面白くて、結構な頻度でレンジに通った。ロッテ葛西に深夜出ているランチワゴンでコーヒーを頼むと、おやじに「ブラックでしたね」と覚えられる程度の頻度である。2階の175番あたりだと奥と手前で2つのグリーンを自然に狙えるので、その辺りを占拠し、奥のグリーンを7アイアンで、手前のグリーンをウェッジでひたすら狙う練習をしていた。金土の深夜、175番近辺で打つ細い男が居たら、それは間違い無く僕である。
Karuizawa 72
[Casio EX-FC100 /70mm F4.1]

  • 軽井沢72南コース。軽井沢にあるが、割とカジュアルで、リゾート感は上記の太平洋益子の方がある。平坦で易しいが、グリーンはなかなか渋いセッティングだ。レギュラーからだったが、結構短い。これはレディースティーだが、キッチュな色遣いである。

 そんな遍歴を経ての100切りである。まぁゴルフをしない人とゴルフしてても運動神経がある人にとっては、1ミリの興味も沸かない話だったと思うが、とりあえず区切りが付いたという事で、個人的なレッスン備忘録も兼ねて、長々と書いた次第である。あと、一つだけ、クラブの助けもあって、アラサー世代で使っている人を見たことが無いブランドだが、マルマンのメガブラッシーという2番ウッドは大変役に立った。僕のウッドからユーティリティーは、殆ど地産地消の観点で(?)YAMAHAのInpresだが、2番ウッド(ブラッシー)だけ、このブランドにしている。この、ドライバーの様にデカヘッドなブラッシーは、ドライバーだとプレッシャーがかかる狭いホールでのティーショットで大活躍だった。半分以上のホールで、このブラッシーでティーショットを打ち、曲がったのは1度だけ、それは100切りのかかった、最終ホールであった。しかも、普通に振って230ヤード位と、かなり飛ぶので、正直ドライバー不要と思った位である。ゴルフダイジェスト誌だったか、どこかの雑誌で早稲田の大槻教授の連載が有ったが、このメガブラッシーを取り上げて、慣性モーメントが大きいデカヘッドはフェアウェイウッドであっても、物理的に理に叶っているという話をしていたが、これには納得できる。あと、僕はヒールヒットのミスが多く、飛ばなかったり左に巻いたりすることが有ったが、シャローフェイスで横幅が有る為、こういうミスが出にくかったのも特筆に値する。
 最後に付け加えだが、アンダー100組入りの時、16番ホールを終えて80と、残り2ホールをパープレイすればいきなり100切りと90切りを同時達成という珍しい記録を作れる所であった。それがスコアを意識した途端、2メートルのパットを半分ショートしたり、曲がらなかったブラッシーが曲がったりで、ダブルとトリプルを叩いて撃沈である。昔からプレッシャーに弱い。こういった精神的な部分は鍛え方がまだ見つかっていない。

[Casio EX-FC100 /60mm F4.0]

  • ついに5アイアンでかつてのドライバーのヘッドスピードがコンスタントに出る様になったのは感慨ものである。かなり5アイアンが安定してきて、かつボールが止まる球が出る様になったので、ユーティリティを一本抜いた。6年前にオクで落とした安物アイアンもそろそろ買い換え時期か。難しいクラブに興味は無いので、飛んでスピンがかかる、低重心なのを探している。