岡田監督、そして4-1-4-1

 むちゃくちゃ忙しい。困ったもんだ。自分の起きてる時間から、仕事とワールドカップ全米オープンを差し引くとゼロである。それなら余り忙しく無いじゃないか、と思われる人も居るだろうが、そういう人にはもっと他に趣味とか自分の時間を持つべきだと忠告する。
 さて、本題に戻ってワールドカップである。正直、望外の結果だ。最少得失点でオランダ戦を切り抜け、次戦に引き分け以上で本戦出場である。ずっと岡田監督をボコボコに批判していたのは、W杯で勝ち抜ける監督は別の人間だというのが理由だったが、別人が監督であってもこれ以上の結果は望みづらいだろう。カメルーン戦は特に見事だった。交代に関して、岡田監督の選択が納得感あった試合は初めてだったかもしれない。先制されてカメルーンが攻勢に出れば、徐々にディフェンスラインが下がり出すのは仕方ないが、そうすると周りのプレイヤーとの絡みで生きる松井が浮き始める。MFの真ん中を担当する長谷部と遠藤が守備に専念されると、松井はサイドで孤立するのである。こういう局面では日本のチャンスは、ロングボール一発を2-3人で決めなければいけないカウンターが多くなる。また、守備で言えば、日本の守備的MFが押されて下がることで、ハーフウェイライン付近にスペースが出来るから、相手のMFがそこを使って良いパスを供給し出す。これを防ぐには前の選手がプレスを掛けていかないと、決定的場面を作られかねない。こういうプレスをするには松井は前半から走り続けで限界が見えてきていた。岡崎はその攻撃と守備の双方で解となる。岡崎は懐が余り深く無く、足技も世界レベルでは無いが、スピードはそこそこだし、思い切りもいい。守備ラインの裏に走り込んで前にスペースがあると生きる選手だ。なので、ロングボールを少ない手数で突破していくには、松井より岡崎の方が適しているし、相手のパスの出所にプレスを掛ける意味でも、速いフレッシュな選手の方が良い。大久保が矢野に変わったのも、大久保よりカウンターと守備双方に向いているという同じ理由だ。また、矢野は背が高いから終わり際のパワープレイに対して全員守備に回る時も弾き返す高さを加える意味合いもある。
 一方、オランダ戦での交代は疑問が多かった。松井から俊輔への交代は意味不明だし、実際逆効果だった。遠藤に加えてエクストラキッカーを増やすのは、押し込んで相手に守備させている時間帯だろうが、ポゼッションが40%を切っている日本の攻め手はカウンターになる。カウンターってのはパスの出し手より受け手の方が重要だ。そしてオランダがいよいよ引き気味になって無理に攻めなくなり、前線のスペースがなくなった時間帯に足元か前方にスペースが必要なプレイヤーである玉田と岡崎。本田と玉田のツートップの直ぐ下にサイドに開いた岡崎と俊輔という4トップ気味の布陣は、「おージダン亡き後のフランス代表みたいだ」という興趣はあったが、実際には殆どワークしていなかった。点を取られた直後、まだ前線にスペースがある時点なら、カウンターの時にポストプレイヤーになる矢野と、その周りでこぼれ球を拾う岡崎のコンビを、疲れてきた松井と、ボールこね気味だった大久保に代えて入れたなら、速い攻撃に繋がっただろう。
 ちょっとダラダラと書いたが勿論交代はゲームの本質では無い。練習試合から打って変わって岡田ジャパンが良くなった理由は、交代じゃなくて4-1-4-1というアンカーを置くフォーメーションと俊輔を先発から外したことが要因だろう。アンカーというのは守備専業のMFで、所謂中盤の底という奴だ。アンカー入れて良くなったというのは、確かに阿部のパフォーマンスが良いってのもあるが、どちらかというと、阿部という一枚が最終ラインの前に居るのだと明確化したことで、その前のMFのラインが高くなったことが主因だ。日本は、強い相手とぶつかった時に、ズルズルと無制限にMFのラインが下がりがちという悪癖がある。最終ラインとMFのラインが隣接して、みたらし団子状態になると、MFの前の広大なスペースを相手に与えてしまう。そこを自由自在に使われ、パスの出所にプレスが掛からないから、最後上背の無いサイドバックの周辺にいいパスが出てピンチを迎える、というパターンが多かった。具体的には、4-2-3-1の時に、8-1-1みたいな感じになるのである。それが、阿部が居ると、MFは阿倍の前に居なきゃと思うのか、比較的高い位置を最後まで保てていた。また、約束事があったのか、特にカメルーン戦では、縦の一定距離を阿部1人でカバーするがゆえに、阿倍の左右に必然的に出来るスペースに意図的に出させて囲んでボールを取れていた。特に、カメルーンのFWが最終ラインで待ちきれず、ボールを受けに阿倍の左右に出てきた瞬間にSBとMFで囲めていた。これは、阿部が凄いというより、阿倍のお陰でバランスが良くなった、という効果である。仮に、このポジションに阿部じゃなくて、今野を入れても同等の効果が望めるであろう。守備的MFとかセンターハーフと呼ばれている人種は、なぜか日本で受けないが、試合のバランスを作るには重要なポジションだ。これまで、長谷部と遠藤とか、必ずしも守備が専攻とは言えないプレイヤーがダブルボランチとして、4-2-3-1の2を形成していたが、このフォーメーションが練習試合で崩壊していたのは当たり前だ。ブラジルだって、ジウベルト・シルバにフェリペ・メロと、守備が第一専攻のプレイヤーを2枚MFに入れている。対する日本は、やっと反省したのか、守備的MFの本職らしきプレイヤーとして阿部を1枚入れたとこである。その意味では、中田-俊輔-小野-稲本という独創的なMFの構成で「黄金の何とやら」と浮かれていた4年前は一体何だったんでしょうねぇ・・。
 あともう一つの要因である俊輔を外したってのは、誰の目にも良くなった理由が明らかであろう。強い相手と当たるワールドカップでは、攻撃はカウンターが多くなるし、その時にスピードに欠け、ボールを持ちすぎる俊輔は全く脅威にならない。よって、セットプレーの位しか使い出が無いのだが、セットプレーなら遠藤も本田も今のチームには存在する。オシムはかつて、日本のバズワードで言うファンタジスタ的概念(日本で、と付けたのはイタリアでファンタジスタとはバッジオの様なセカンドストライカーの事だからだ)である、「エクストラキッカー」は多くてチームに2人と述べていたが、今の日本であれば、エクストラキッカーは遠藤1人として、もう1人は守備的MFかサイドアタッカーに使った方が良い。これはフォーメーションや戦術のせいと言うより、モダンなサッカーのスピードに合わせられない本人の問題である。
 そんでもって天王山のデンマーク戦だが、最後にデンマークの試合を実は2試合とも忙しくてまともに見ておらず、何もおもろいネタを思い付かない事を告白して、締まりの無いエントリと致したい。ま、敢えて挙げるなら、スナイデルの1点は、周りに日本の選手が誰も居ないどフリーだったし、ああいう中盤の選手の攻め上がりをケアすべきは日本のMFであるべきで、その辺MF陣は守備が本職でないのは承知しているけど、そこは修正点かと。でも、それ以外は4-1-4-1はワークしてるし、今んとこ変える必然性が無いからキープコンセプトで良いんじゃないかと。あと、俊輔はやっぱり無しで。