淡路出張

淡路ってのは関西に住んでいた時から度々訪れる好きな場所だったが、この産業乏しき地にまさか出張するとは思わなかった。淡路はあんまりビジネスホテルも無いので、泊まるのは淡路観光ホテルなる温泉ホテルで、露天風呂にプール付きである。AIR-Hもイマイチ入らないし、部屋にLANポートなんぞは無いので、仕事にもならん。という訳で、諦めてぐっすり休むことにした。ただ、部屋のベッドのスプリングが弱くて、起きたら腰痛だったのだが。

淡路は島ではあるが、それなりに大きな島なので、山と平地が織り成す風景は本州とさほど変わらない。日本神話の一つの解釈としては、伊奘諾尊(イザナギインザーギでは無い)・伊奘再尊(イザナミ)の国産みで、最初に産んだのが失敗で、「吾恥(あはぢ)」と思ったので、この失敗作が小さな淡路島(あはぢしま)となったというのが有り、この解釈ならば淡路島こそ日本の元祖みたいな最も古い島で、日本の平均的な風景が続くのも何となく納得する。


[SHARP 904SH/35mm F2.8]
・島的なせせこましさは無い。ゆったりとした風景。

市街地近くには、かつては東洋有数の規模を誇った紡績工場が有ったらしく、その工場の外壁だった美しく年を重ねたレンガを使ったレストランが有った。メニューは定食類が多くてイマイチspecialでは無いのだが、神戸のスタンダード銀行の旧店舗を利用したカフェとか、こういうリノベートした建物はそれだけで価値がある。


[SHARP 904SH/35mm F2.8]
・レンガに本物の味わいがある。

[SHARP 904SH/35mm F2.8]
・これが内装。904SHは光源を撮ると、こういう風に変に尾を引いてしまう。

一方で市街地は極めて普通の地方都市である。特に何らか個性があるという程では無い。大浜というビーチはなかなか白めの砂で綺麗だ。もう少し大人のテイストで整備すれば、リゾートらしくなるだろう。


[SHARP 904SH/35mm F2.8]
・古い市街案内。ここに載っている銀行は今は殆ど存在しない。関西の金融再編の波が如何に激しかったかを物語る。というか、殆どが破綻行だ。

[SHARP 904SH/35mm F2.8]
・えー、どこにビルがあるのでしょうか。そうか、純粋に「建物」という意味なのか。

街は普通だが、住んでる人々はまぎれもなく島のノリである。出張先で案内してくれた方は、軽自動車に乗せてくれたのだが、数分おきに知り合いを見つけては「やあやあ」とやりだして、ちっとも先に進まない。なんとなくパキスタンの官憲を思い出した。南の方の国は、大概こんな感じである。港の観光案内所に至っては、係員が全員テレビに見入っている。本州ではこういう事は無いと思うが、僕が子供の頃は、こんなのんびりとした感じだった様な気がする。お客様ファーストの徹底も良いのだが、公共施設とは言え、客が居ない時にテレビを見るくらいは大目に見ないと、息苦しいかもしれない。

[SHARP 904SH/35mm F2.8]
・見事に内側を向いた係員専用テレビ。
帰りは、淡路は洲本港から高速船で関空に渡った。この高速船は、僕にとって、この出張の唯一の「旅」的な楽しみだった。余りセントリックでは無い乗り物はいつだって旅人の心を刺激するものだ。スピードはかなり速い。出航して、うとうとしたらもう関空である。二期工事を間近に見つつ接岸する。こういう海の交通はアメリカにも欧州にもアジアにもそれ程無い、島国ならではの交通の様に思われる。関西は瀬戸内海という内海に神戸空港関西空港と二つ空港を作ったのだから、伊丹空港を当初の目論見通りきっちり潰して、この2つに集約し、海で結べば効率的の様に思う。淡路から関空が船で40分である。神戸からも同じ様な時間で行けると思うのだが。キタからは空港が遠くなるし、そうなると移動需要が新幹線に移ったりして難しい話だとは思うが、関西圏に3つ空港が有るのも無駄である。

[SHARP 904SH/35mm F2.8]
・船は割りと小さな双胴船だった。
ホテルは温泉付きで、市内観光して、飯はキスにベラにタチウオと東京では余り刺身にしない地魚を食らい、寿司をほおばり、アワビを焼き、一体何の出張だという感じだが、勿論行く方はウェルカムである。ビジネスの方は、がーんと衝撃が走る事実が発覚して、イマイチだったのだが。どうやらまた行く事になりそうである。