東証記者会見

 今日の日経の4面に日興上場廃止に関する東証の西室社長の記者会見が一問一答で載っていたが、これが極めて面白い。是非ご一読をお勧めしたい。30%くらいの質問は記者と東証でなんとか互角、他は東証の貫録勝ちという回答で、一つも東証側が答えに詰まる様な内容は無かった。一番ひどかったのが、この2つの質問である。

  • 宙ぶらりん状態が続いたのでは無いか
  • (上場廃止基準が)あいまいなのでは無いか

 記者が市場を判っていないというよりは、実業の実務を判っていないのだろう。ありがちな政府批判と同じセンテンスで取りあえず聞いてみた、というような質問である。年金にしても教育にしても税制にしても高齢者問題にしても何にしても、政府に対して宙ぶらりんである、あいまいである、という批判はたやすい。しかし、こんなレベルの質問と意見を聞かされても実があるとは思えない。サクサクと2-3日の調査期間で上場廃止という重要な決断をされても困る。しかも、もともと3月中旬にまでに決定すると期限まであらかじめ切っていたのだから、これは宙ぶらりんとすら言えない。あいまいさについては一考の余地は有るが、刑法上情状酌量なる概念が存在しうる国だから、民事上も戦略的にあいまいな基準を用いることそのものが問題では無いだろう。あいまいさは市場に対してどういうメリットをもたらしていると思うか、なら質問として成り立っていると思うが、あいまいなのでは無いか、と聞いてもそれは批判であって質問ではない。答える側は、「あいまいです」と答えればいい話である。
 むしろ、我々が聞きたいのは、東証が証券市場としてグローバルに戦っていく上で、投資家保護と発行体の使い勝手のバランスをどう取れば支持を得られるか、それと今回の判断は関係するのか、そんなポイントであろう。東証として重要か重要で無いかの判断ポイントは記者会見の前段で説明されているから、そこを「それは重要と判断すべきだろう」と詰め寄ったり、判断の是非を掘り下げたりしても神学論争なのである。
 まぁ、大臣の光熱費とか国家の課題の中で、最もどうでもいい問題になぜかマスコミは精力傾けてしまうカルチャーだから、余りそれを皮肉っても労力の無駄かもしれない。問題になっている農水相には、人口減少国の農水政策はどうあるべきなのかとか、環境と農業行政を分離しておく意義はとか、問い詰めるべき課題は幾らでもあるのだが。
 東証西室社長も、流石に東芝の社長を務めただけあって、その辺のマスコミのレベルはよく理解しているのか、最後の人を食った一言が彼の心境を雄弁に示している。

  • Q:世界から東証の対応が注目されたが。
  • A:胸を張ってどうだとは言えないが、世界で上場廃止という規程を持っているのは東証のみ。それを濫用するのではないか、という方に関心が集まったのではないか。やれるからといってそれを濫用することが歓迎されることではない。

 完全に記者団をなめてますな。あと、世界で上場廃止規程を持っているのが東証のみという事と、その意義について掘り下げた様な質問は無いの、という気分もきっとあっただろう。

○ついしん

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