大分再訪 其の一

 週末に大分を訪れた。前に大分に行ったのは3-4年前のGWで、その時は遅ればせながらの47都道府県コンプリート達成の瞬間であった。大分が最後になってしまったのは、九州のメジャーな交通はどうしても東シナ海よりなので、そこから外れる大分や宮崎は、そのものを目的地にしないと行きにくかったからである。関東人がなかなか和歌山に行けないのと同じ様なものだ。
Crach of wall
[NIKON D700 /AiAF Nikkor 24-85mm F2.8-4D /85mm F4 /D2Xmode1]

  • 画質はいいが、寄れない標準レンズが増えて来た中で、この安レンズのいい所は、その明るさと言うより、1:2の簡易マクロモード。本職の90-105mm級と比べると若干ボケがうるさいが、これ位写れば満足。

 しかし、最後になってしまった割には大分県はもの凄く良くて、47都道府県それぞれ個性があるけど、相当好きな方、というか、沖縄とか石川とか京都とか地元静岡とかと並んで、最も好きな県の一つになった。別府や湯布院、関サバ関アジに麦焼酎、というのが典型的な大分観光アイテムだと思うが、僕は国東半島に点在する一桁世紀の極めて古い仏教遺跡と、長湯温泉の泉質、及び大分市の人情がとても気に入った。それがとても良い思い出ではあったので、この秋は余り外出してないこともあり、ひょんな機会を捉えて、ひょんひょんとまた大分に行ってきたのである。
 大分空港は大分市からは対岸の国東半島にある。ホバークラフトなんていう魅力的な乗り物が大分市まで直通しているが、これに乗る前に、旅人はまず国東半島を訪れるべきであろう。国東半島が凄いのは、狭い半島なのに国宝・重文級の仏教遺跡が京阪奈並の密度でうじゃうじゃ有る所である。前回は、一つのお堂に4つの重文の如来明王が鎮座する真木大堂と、同じく重文である熊野磨崖仏(磨崖仏ってのは、崖を削って作った仏で、今は無きバーミヤンの大仏像が典型的である)を見た。今回は、空港から30分程の、文殊仙寺の十六羅漢を見に行った。


ROAD to Buddism
[NIKON D700 /AiAF Nikkor 24-85mm F2.8-4D /85mm F6.3 /D2Xmode1]
 山門からの登りはなかなかきつい。辺りは人の手が入っていない古代の森である。森には樹齢1000年のケヤキもあるが、寺の創建は648年と更に古い。1000年切りは鎌倉以降にようやく開けた関東にはなかなか無い数字である。
Dialogue with tiny history
[NIKON D700 /AiAF Nikkor 24-85mm F2.8-4D /75mm F10 /D2Xmode1]
 その辺に落ちている新しめの石灯籠も、うっかりすると江戸時代のものである。それでも、この寺の歴史の中では新参者の方だ。機械の無い時代にここまで削るのはどれ程の時間がかかったのか、想像も付かない。
Cutting Edge
[NIKON D700 /AiAF Nikkor 24-85mm F2.8-4D /62mm F6.3 /D2Xmode1]
 参道にも本堂にも誰も人は居ない。凄いことであるが、重文とかでも一人で快くまで静かに見れるのが国東である。
Mitsumeru
[NIKON D700 /AiAF Nikkor 24-85mm F2.8-4D /56mm F6.3 /D2Xmode1]
 これが十六羅漢である。ひっそりと緑にうずもれつつある。国東半島の仏教遺跡は、そのクオリティに比して、観光地化されておらず、それによる収入が期待できない。基本、地元の檀家・氏子に細々と支えられているのだろう。なので、どこも緩やかな衰退の匂いがする。ここも僕が老いを迎えた頃にはどうなっているか判らない。ただ、その衰退の匂いがまた人を魅了するのである。


 国東を去って、その後は内陸部に向かい、長者原で日の入りを迎えた。ラムサール条約登録湿原であるタデ原湿原に面し、九重連山に囲まれるこの地の秋は本当に美しい。
ChojaBaru
[NIKON D700 /TOKINA AT-X17PRO 17mm F3.5 /17mm F8 /D2Xmode1]
 この辺りは、雨水のみによって植生が維持されている高層湿原と、地下水で涵養される低層湿原との中間の性質を持つ中間湿原としては日本最大級の面積であり、空気が澄んでくるこの季節は湿原の隅々まで見渡せる。
High Iso test
[NIKON D700 /AF-S VR 70-300mm F4.5-5.6G /300mm F5.6 /D2Xmode1]
 この湿原で優勢なのは、ススキである。一面のススキ、白い平原だ。湿原ではあるが、遊歩道が整備されていて、湿原の中に入っていける。子供の頃、地元の川端は一面のススキの原っぱだったが、今も残っているのだろうか。ちなみに、被写体ブレを怖れて1/800までシャッタースピードを上げたら、ISOが6400になってしまった。ディテール重視の風景写真としては有り得ないが、ウェブサイトに載せる位なら何とか見れる。
Japanese Red
[NIKON D700 /AF-S VR 70-300mm F4.5-5.6G /220mm F5.6 /Landscape]
 湿原のほとりの紅葉である。日本の赤は熱帯の赤とは違う。控えめで、複雑な色だ。
Momentum of fall
[NIKON D700 /AF-S VR 70-300mm F4.5-5.6G /116mm F10 /D2Xmode1]
 西日本は常緑樹の王国だが、すこし標高を上げれば植生は馴染み深いものに戻る。高地は既に紅葉が始まっている。
Wide-angle test
[NIKON D700 /TOKINA AT-X17PRO 17mm F3.5 /17mm F4.5 /Landscape]
 空が高い秋、空気が澄んだ高地は、広角レンズに打ってつけだ。最近、海外でも乾燥地帯を行くのが好きな僕は、澄んだ空ばっかり旅に出ると撮っている気もする。撮ってみると、夕暮れとは、一様で無い事に気が付く。こういう写真、どう撮るの、とたまに聞かれるが、何も一眼が必須という訳ではなく、換算28mm辺りのレンズが付いていればコンデジでも撮れる。ただ、重要なのは測光をスポット測光中央部重点測光にすることである。あと、FXになって、この17mm単玉、活躍する様になった。17-35/2.8という金鉢レンズも持っているが、デカ重なので、ついつい17mm単の出番が多くなる。描写はまぁ、余りそこを追求するレンズでは無いかと。


 湿原を出て、そして山を越えて、宿泊地である長湯温泉に向かった。ここは再訪である。雰囲気であれば、黒川温泉であろう。箱根の様な宿の中に閉じたアップスケールのくつろぎであれば湯布院だろう。長湯にはそれらは無いが、ひたすら優れた泉質がある。十津川温泉中山平温泉なんてのが僕的には泉質番長だが、ここも負けていない。炭酸水素温泉で、温度が低ければ気泡を体にまとい、高温であれば、色は深い緑である。また、浅い露天でうとうと横になれるのが、ここが最高な理由の一つである。
exhibitionistic
[NIKON D700 /AF-S VR 70-300mm F4.5-5.6G /70mm F7.1 /D2Xmode1]
 泊まったのは、外湯に行く前提のスパルタンな宿だ。ただ、建物自体にはなかなか趣があった。千と千尋は見てないが、その湯屋みたいな建物である。湯屋のほんとのモデルは、小金井の子宝湯ではあるが、遊郭とかにありそうなこの形式、何か呼び名があるのだろうか。


 大分空港に着いたのが昼飯時を過ぎていたから、半日で羅漢見て、湿原行って、温泉入ったことになる。盛り沢山だった。九重の山の中に、温泉はそれこそ無尽蔵に湧き出ているから、もっと温泉立ち寄れれば尚良しだが、満足すべきであろう。こういう、非都市圏の観光コンテンツが豊富なのが大分のすごさである。PR下手なのか、単に東京・関西から遠いのか、人が居ないのも良い。さて、写真入れると分量が多くなるので、翌日の話は次回と致したい。