3日目。ボゴタ→カラカス

 Aviancaの機内食は比較的美味しく、ブラジルで食べたような豆のスターチと煮込んだ肉だったが、これはナイスだった。基本バックパッカー的旅行に出るならエコノミークラスしか選択肢は無いのだが、僕の数あるエコノミークラス機内食経験の中でもAviancaのこのスターチは上位にランクされた。ただ、夜行便ゆえ明くる次の日の朝ご飯のサンドイッチは何とも言えない貧しい味だった。豊かな食文化を持つ国の食の作り手も、サンドイッチみたいな食文化に乏しいアングロサクソンの食べ物までは美味しく作れないのだろう。
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[Panasonic LUMIX LX3/ 37mm F2.4]

  • このねっとりしたのがその豆。

 コロンビアのボゴタ空港は意外に発展していて、2-3時間の短くもないトランジットだったが、それなりに楽しめた。コーヒーのレベルはやはり高い。エスプレッソのように濃く淹れるのだが、目が覚める味だ。機内食では旨い豆のスターチを出し、そして空港では素晴らしい濃いコーヒーを出す。豆使い的にはグレートな国である。空港のお土産屋も多様なコーヒー豆を販売していて、かなり惹かれるものは有ったのだが、旅の始まりで荷物を重くする趣味はないので諦めた。また、僕的な国のIT発展度を測る指標として、空港で売られているSDメモリの最大容量がある。成田ではパナソニックのClass4のSDメモリの8Gが売られていた。デジカメおたくの中での通称金パナの様な高性能品でも無いのに1万円オーバーという立派な値段である。ロセンジェルス国際空港、LAXでも同じく8Gのメモリを見かけた。ボゴタでは4Gのメモリが何故かメモリースティック主体のSONY製品の横に置かれていた。日本では見ないマクセル製である。立派なもんだ。発展途上国に行くと。日本で売られているメモリの1/10の以下とかはざらで、手に入るのがせいぜい64Mであったりする。僕のNIKON D90に入ってるのは贅沢にもSANDISKのEXTREME3の16Gだから、ほとんど単位が1周り違う世界だ。昨年行った西アフリカでは町中の電気店でもそんな感じで、下手するとSDメモリって何ですか状態であった。この意味で、降りてはいないもののコロンビアの発展度は結構高い、というのが僕の見当である。豆使いに優れ、4GのSDカードを使う人々が住む国。それがコロンビアがファーストタッチで僕に残したイメージだ。行ってみたいではないか。
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[Panasonic LUMIX LX3/ 24mm F3.5]

  • 誰かがぷよぷよしてる途中。

 しかし、今回はトランジットで目的地はベネズエラである。コロンビアの豆とIT発展度の調査レポートは次の機会である。さて、コロンビアの治安が改善されつつあるというのはそこここで聞く話だが、目的地のベネズエラの治安が悪化しつつあるというのも、そこここで聞く話である。特に首都カラカスを取り囲む山地には巨大なスラムが形成されつつあるという。南米ではよくあるパターンだ。前に行ったボリビアの首都ラパスも標高4000mの盆地に形成された街だったが、盆地の底が市の中心地であり、高級住宅街で、外側の盆地のへりにスラムが形成されていた。日本では眺めの良い高台が高級住宅地になるが、アンデスに沿った国々では、空気の濃い盆地の底が高級住宅街で、貧民は空気の薄い高台に住み着くのである。
 Lonely Planetが余りに治安について脅すので、空港からはCentro、中心地に着く乗り合いバスで無くて、フォードエクスプローラのオフィシャルタクシーでホテルまで直接向かうことにした。180ボリバルだと言われたが、150とも聞こえ、まぁどっちでもいいかと、オフィシャルタクシーだし余り気にせずに乗った。空港の銀行や両替所の公定レートは約2ボリバル=1ドルであり、180ボリバルだと90ドルということで、殆ど先進国並みの物価水準である。高いなと思いつつ、タクシーに乗りながら、今さらながらにLonely Planetをめくると、空港から市街までは60ドルが相場と書かれている。150でも換算75ドルだから、ちょっとやられたのは間違いない。行先はSabana Grande、大サバンナという意味不明の地名だが、Centroの隣の商業地区のGran Meliaという高級ホテルである。都市の真ん中にサバンナとは、東京砂漠みたいなものか。見知らぬ都市なので、最初の一泊は安全を見て取ることにしたのだが、電話する手間をさぼって、expediaで取ったので、バックパッカーとはとても言えない高級ホテルになってしまっている。着いて、タクシーの運ちゃんは当然180だと主張してきたが、長い交渉を覚悟しつつ、落とすのは165と決めて、あれ150だったんじゃない、ととぼけていたら、予想外に早く運ちゃんが主張を引っ込めて150で良いと言い残して立ち去った。高級ホテルのドアマンが居る前で揉めるのが嫌だったのか、そもそも150でも満足すべき水準だったのか、たぶんその両方だろうが、高いホテルに泊まると、たまにこういう神通力みたいなものが発揮される時がある。
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[Panasonic LUMIX LX3/ 24mm F2.8]

  • Meliaってのは中南米の地域ブロックホテルチェーン。

 若い頃のサラ=ペイリンみたいな英語ができるフロントに、この辺りは夜は絶対出歩くなと脅されたので、明るい内に観光しようと速攻出掛けることにした。ベネズエラは、熱帯の国だから、当然マラリアのリスクはある。ただ、中南米マラリアは、アフリカの熱帯性マラリアと違って、それ程致命的でないことが多いから、西アフリカの時に持っていった高価なマラローンで無くて、飲みなれたドキシサイクリン(Doxycycline)にした。こちらの方が何分の一という値段だし、日本ではかつてビブラマイシンという名前でニキビの治療に使われていた位だから副作用的にも安心感がある。僕は、熱帯の国々に行き出してからは、とある製薬会社に勤めている知り合いにお願いして、このドキシサイクリンを分けてもらったり、或いは北米に行った際に、トラベルクリニックで処方箋を貰って、現地で買ったりして、備蓄を行っていたから、この薬は山ほど持っている。しかし、このドキシサイクリン、飲むのはLAから飲み始めていたのだが、たっぷりの水と共に食後に飲め、というインストラクションを甘く見て、食前にがぶっと飲んでみたら、数分して胃腸がひっくり返る様な大騒ぎである。あわてて、出かけた矢先のフードコートで食べなれたコメを胃に流し込み、若干は収まったが、微妙な気持ち悪さは残り、ホテルに舞い戻って寝た。ほとんど一日がドキシサイクリンで終わってしまった本日であった。