ハノイ

 ゴールデンウィークはカレンダー通り休めることになって、慌ただしく旅に出ることにした。イランや南インドに最初は狙いを定めたが、エアチケットが20万の余もする。さすがに5日間では勿体ない気がして、半額以下のベトナムに行き先を変更した。勿体ないとは言うものの、ふんだんに旅に出る機会があるのならば、その考えは正しい。ただ、そう長くは休めないのが常であれば、5日間でも厚く張って遠くに出た方が満足度は高い様な気もする。でも、貧乏性ゆえどうにも踏ん切りが付かず、毎度短い休みは東の付くアジアを出れずに数年過ごしている。
 さて、ベトナムは4-5年前に香港から陽朔を経由して陸路国境を越え、フエまで南下したとき以来である。古いバックパッカーの間では、ベトナムと言えば名物は停電だったが、フラット化する昨今、もうそんな時代では無くなった。どこの国でも水と氷売りは貧しい人の職業だが、今回飛行機を降り立つと、ベトナムの水売りの手には、NOKIASamsungの携帯がしっかりと握られていたのである。新興国という言葉を噛み締めながらの旅路となった。
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[Fujifilm Finepix F200EXR]

  • ベトナム航空の色は美しい。バイオレットというか、シアンというか。青とか赤とかの西洋の物差しで割り切れない複雑な色を固有に持つ民族は、古い文化を須く持つ。

Meat and noodle
[Fujifilm Finepix F200EXR]

  • 血の煮こごりとエビのツミレの米麺。豚の血の煮こごりは大学時代に台湾で食べたのが最初だが、そんなに癖が無くて食べれるもんである。むしろ、昔はコリアンダーの方が苦手だった。コリアンダーはしばらく食べている内に好きになったけど、血の煮こごりとは付かず離れずの関係である。

Lively restaurant
[Fujifilm Finepix F200EXR]

  • 食堂でトイレに行って、手を洗おうとしたら、うん!?生活感溢れる家族経営のお店だった。

Night market
[Fujifilm Finepix F200EXR]

  • 夜市で紙細工に人が群がる。アジア人は全般に手先が器用だけど、こんなに器用なのはベトナム人くらいかもしれない。紙細工に限らず、芸が細かい。彼らは背が低くて、身長約180cmの僕の肩くらいまでしか上背が無いくらいだが、小さな生き物だから手先もより器用なのかもしれない。

Regret
[Fujifilm Finepix F200EXR]

  • 身長と体重を計る商売。同じ商売は各国で見かけるが、大抵乞食の余興みたいな時が多いけど、ベトナムではきちんとした職業として成立している様だった。勇気ある挑戦者の女性は息を飲んで、それまでの人生を振り返っていた。この思いをものしたものが、後世マルクス・アウレリウス・アントニヌス著として伝えられる「自省録」である。

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[Fujifilm Finepix F200EXR]

  • 移動遊園地。とにかく子供が多くて、若い国であることに驚く。僕の子供の頃は、まだこんな感じで子供が一杯居た気がする。今は、田舎に帰っても、子供が少なくて祭りが成立していない。人口構成と共に国は老いる。そのことにやっと気が付いた気がする。

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[Fujifilm Finepix F200EXR]

  • 鶏頭入りフォー。すらりと伸びた、鳥さんの煮られた首が、目の前でバコンバコンと肉切り包丁で切られて、器に投入された。食べる所は少ないが、旨かった。

Orient
[Fujifilm Finepix F200EXR]

  • 安っぽいカトラリーと、オリエンタルな柄のランチョンマット。共に使い込まれて味がある。というか、味が出てきそうである。

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[Fujifilm Finepix F200EXR]

  • これが絶品で旨かったお粥。煮込まれて、米はもう原型を止めず、たんなる澱粉の液体と化している。これが強烈に濃い鶏ガラの出汁に絡まって、浸透圧の法則によって体に染みこんでいく。これ、日本で出しても絶対イケる。ちなみに、地元民で激混みの屋台だった。このサインは鉄板ですなぁ。

Mayday
[Fujifilm Finepix F200EXR]

  • そう、今日はメーデーなのでした。紅い国旗に、思わずワルシャワ労働歌を口ずさむ。・・そんな訳ないか。

urban chicken
[Fujifilm Finepix F200EXR]

  • 首都のど真ん中に鶏が二匹。子供は羊飼いの少年の目で見つめていた。

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[Fujifilm Finepix F200EXR]

  • 虎を描こうとしたのは判る。でも、虎の顔を知らなかったと見える。犬と龍と朝青龍の合いの子を描いて虎に見せようという狼藉だが、至って見立てが甘い。かなり異様な代物と化している。

HondaSanda
[Fujifilm Finepix F200EXR]

  • ホンダのバイク。エンジンは、、、サンダ。ホンダサンダ。

Dry
[Fujifilm Finepix F200EXR]

  • 色々干され後。仕事干されるのは困りものだが、この干しっぷりはいい仕事してる。きっと旨い出汁が出ることだろう。

Cut
[Fujifilm Finepix F200EXR]

  • お店を出すのは勝手だ。しかし、なぜ人は髪を切られる姿を白日に晒そうと思うのだろうか。カミソリ仕事中、うっかりぶつかって出血大量、、というのを想像していたら、水平が出てない写真になってしまった。というか、F200EXR、広角端は今時珍しいくらいの樽歪みがある。

Steel
[Fujifilm Finepix F200EXR]

  • 金属はやっぱ味出ますな。鉄橋という言葉も、プレストレスト・コンクリートの橋ばっかりになって、国内では余り使わなくなってきた。コンクリより鉄の方が旅情はそそる。コンクリート自身はイノセントだけれども。

Smile
[Fujifilm Finepix F200EXR]

  • 店って訳じゃないと思うんだが、民家であれば、門前にイラストは描かないだろうと思う。

Stream
[Fujifilm Finepix F200EXR]

  • 機械化銀輪師団が紅河鉄橋を渡河中。北斗の拳によく出てくる雑魚バイクマッチョ軍団もこんな感じだったのだろうか。

Ghost
[Fujifilm Finepix F200EXR]

  • 靄の向こうに亡霊の様に立つビル。なにやら危険な寄生虫に取り憑かれた様に見えた。余り高い建物が無いハノイだが、遂に高層ビルの時代がやってきた様だ。またカメラの文句だが、広角端でも無いのに、コンデジにしてこの周辺四隅光量落ちはひどいのではあるまいか。横木安良夫の有名な「サイゴンの昼下がり」には、スーパーアンギュロン65mm/F8という、凄まじい周辺光量落ちが癖のレンズで撮られた写真が多く収められているが、幾らベトナムに来たからと言って、コンデジがその真似をする必要はあるまい。

Xoi
[Fujifilm Finepix F200EXR]

  • これは米だけれども、なんと餅米、おこわである。ハノイの夜の最後はおこわで締めた。ベトナム語では、XOIと言うが、これが結構旨い。前に来たときの味が忘れられなくて、同じ店を探し当てて食べた。それ程メジャーな食べ物じゃないから、簡単には食べれないけど、もしベトナムに来ることがあって、フォーを食べ飽きたら、探してみては如何。

 ハノイには一泊だけして、この後夜行列車で中部はホイアンという街に向かった。ハノイは雨期の始まりだけれども、中部はまだ乾期なので、それ目当てである。5月に雨が降らず、暑すぎず、という地域は東南アジアでは貴重だ。タイとかは暑期なので、行く気にもならないし、南東モンスーン諸国は全般に雨期の始まりである。気候ハンター的旅行者は、ゴールデンウィークならベトナム中部か季節変動の無いマレーシア、夏休みならバリ、冬休みならタイやミャンマーあたりをつい選好してしまうのである。
 余談ながら、今回の旅カメラは、出発前にモデル末期で捨て値で叩き売られていたのを保護した、FujifilmのF200EXRという機種である。前にエントリで書いた、タイマー作動で昇天した、ソニーのW300の代わりである。CCDシフト式手ぶれ補正のイメージを変え、1/8秒でもきっちり絵は止まるし、色もフィルムメーカーだけあって、実に自然で良い。でも、デジタル補正全盛の時代なのに、原始的な樽型歪みや周辺光量落ちを見せられるとちょっとイラっとする。水平や垂直線が歪むコンデジに久しぶりに出会った気がする。小さいけど画質が良い、というコンデジを狙うなら、CanonのS90の方が鉄板かな。弱点判ってて使うのなら気にならない範囲だとは思うけど。フルHDデジカメのソニーHX5Vも有った気もしたが、動画は凄いんだけど、低感度の常用域の画質がこちらは気になる位いまいちなのと、なんか色が黄色く出る(昔っからソニーCMOSセンサーは黄色く出るのだが)ので、普段使いカメラは、今んとこ得意不得意はあれど、F200EXRになりそうだ。

サイゴンの昼下がり

サイゴンの昼下がり