お好み焼き「きじ」

TOKIAに「きじ」が出来た。梅田のお好み焼き有名店である。新梅田食堂街という名前からしてレトロな阪急梅田駅に隣接したエキサイティングな雰囲気のレストランアレイにある。新梅田食堂街は、最近改装されて少しだけ綺麗になったが、新宿ゴールデン街が一つの建物の中にある様な、あるいはチョンキンマンションの下層の様な、袖ふれ合う距離で飯を食う小汚い場所である。
こういうとさも安くて旨い店が並んでいそうだが、残念ながらイマイチ高い上に(1000円程度)、それ程美味しくも無いというのが真実で、焼き鳥「とり平」、定食屋「僕の店」はなかなかだが、それ以外はここで特に食わなくても、という感じである。立ち飲みが好きなら「奴」もいいが、安いがむちゃむちゃ旨い訳ではない。東京人が大阪出張に行ったついでに、大阪駅近のこの食堂街に来て、うまい!食い倒れ万歳!みたいな話を現実でもblog界でもよく聞くが、ここは要は駅ビルのレストラン街を高度成長期の安飲み屋の雰囲気でパッケージした所である。新梅田食堂街愛用してます、みたいな事を吾妻人が上方ででかい顔して言うと、八重洲口のほっぺタウン最高です、と東京で言うのと同様の、結構なサムさに陥るので注意されたし。
大阪の商人は、そんなおのぼりさん相手にしたたかな商売をしている。そんなに味に凝らなくても、雰囲気に呑まれて満足してくれるからだ。勘定の一割や二割は誤魔化されているかもしれない。東京人は、駅から離れてその舌を試すべし。福島・新地・天六・十三。一駅行くだけで、ぐんとディープで安くて旨い店がある。

さて、そんな新梅田食堂街の中で「きじ」は、食べれる店の一つである。僕は根本的にお好み焼きは広島焼の方が旨いと思っている関西在住の人の中では隠れ切支丹の様な存在なので、あんまり大阪のお好み焼きに熱情がなく、決して詳しい訳ではないのだが、白眉を十三「やまもと」のねぎ焼きとしても、それに続くお店の一つなのは間違いない。

今日はふらふらと有楽町から八重洲を歩いていたので、吸い込まれる様にここに入ってみた。
結構繁盛している。きじは、梅田スカイビルにも支店があるが、こっちの店で見たことのあるアンちゃんが店員で来ていて、懐かしく思った。もちろん先方は覚えては居なかったが。

五目そばである。手でほぐしてしまう。カウンター割烹といい、鉄板焼きといい、料理人と対面できるのは日本の生み出した世界に誇れる型だと思う。

たこ玉。旨かった。

全体として、世界を揺るがす様な店では無いが、粉もの不毛の地、東京都心においてはなかなかの味、コストパフォーマンスであると思った。東京店は、すじモヤシというのが独自メニューとのこと。今度トライしてみることにする。

しかしTOKIAを見渡すと、つるとんたんや、インデアンカレーなど関西系の店が多い。三菱電機JPモルガンが入るここに特殊的に関西の店を選好する需要は無いであろうから、三菱地所のリーシングマネジャーが東京に出店していない地方の店、みたいな切り口で手軽に検索してピックアップしたのだろうか。
おっと、批評をし始めたが、そういえば知り合いの三菱地所の方が東京ビルやってたと言ってたな・・。その方は、パティセリー・サダハル・アオキを丸の内に連れて来たなのだが、ちょっと同じ人の仕事とは思えない。
あと、印象としてつるとんたんは何となく苦戦しそうな感じがする。宗右衛門町とか北新地とか、どこか粋な文化の薫る街だと、ああいう細麺でつるりと食べるうどんが似合うと思うが、こんな殺風景な場所ではちょいとそんな気分になれない。