高倍率ズーム VS 標準ズーム

 レンズについての、かなりオタクなエントリを書いたが、ちょっとだけ続き。高倍率ズームの画質が本当にイマイチかをちょっと考えてみたい。前エントリの中で、購入した24-120mm f/4Gは、DXの高倍率ズームである18-200mmよりは良いと書いたが、サンプルはノイズでイマイチな代物だった。また、なんと阿呆なことに、今更スピードライト使えば室内でもISO200で撮れる事に気付いたので、はてさてと、やり直しを試みてみた次第である。
 条件は、SB-900を用いて1/60秒・ISO200・VRオフ・被写体からの距離は約70cmである。比較対象は、D700に24-120mm f/4G、D90にDXの高倍率代表としてVR 18-200mm f/3.5-5.6Gの初期型、及びDXの標準ズーム代表としてSIGMA DC 17-70mm f/2.8-4.5 Macro HSMで、こちらもOS無しの旧型である。DXには最近投資していない事を期せずして思い知らされる。
 この比較で、デカ重のFXの最新標準ズームが軽くて便利なDXの高倍率より画質が良いかが判る筈だ。

  • 28mm・Center・f/4.0


 どれもそこそこだが、24-120mm f/4GとSIGMAがほぼ同じで、多少ビハインドして18-200mmである事が判る。実際のフィールドでの写りだと、24-120mmはちょっと線が太めなので、おそらくSIGMAの方が中心部が繊細な解像になって、良く見えると思うが、こういったテスト上は互角と言っても差し支えない。なお、左だけがD700だが、WBをAUTOにしていたので、ちょっと色が違うのはこのせいだと思う。なお、中心部は、どれもそこそこなのは明らかなので、以降周辺部だけの比較とする。周辺部は、右上隅の横3750ピクセル、縦250ピクセルの地点から250×250ピクセルを抽出している。

  • 28mm・Corner・f/4.0


 前回の24-70mmとはやはり差が有るが、この中では24-120mm f/4Gが良い。続いて18-200mm、僅差でSIGMAという感じだろう。SIGMAはワイ端開放でもそこそこ解像するというイメージが有ったのでこの結果は意外だ。

  • 28mm・Corner・f/8.0


 絞るとSIGMAが恐ろしく良くなる。24-120mm f/4Gと同等か、僅かに良いかもしれない。広角は絞って使うことが多いので、SIGMAの良いイメージは、この結果から来ていたのかもしれない。一方、18-200mmは絞っても余り良くならない。

  • 75mm・Corner・f/4.0


 これが問題の(?)、中望遠域だが、僕はこの周辺の焦点域を多用するので、ここでの比較とした。順番は、24-120mm f/4G > SIGMA > 18-200mmなのは明らかだが、18-200mmはアウトフォーカスした様な絵である。正対してなかったのかは後段で検証するが、左右上下が均等なボケ具合で、かつ三脚で水平も取っていたのでポジションの問題ではないと思う。おそらくこれは像面湾曲で、18-200mmは中望遠域のピント面が平面では無いのだと思う。僕はどうにもDXの高倍率の絵には満足できなかったのだが、ワイ端やテレ端じゃない、このレンジの絵が特に悪いからだという気がしてきた。ちなみに、換算51mmで標準域で撮っても結果はほぼ同じでかなり周辺の絵は悪い。

  • 75mm・Corner・f/8.0


 絞っても結果は大差ない。この焦点距離だと、被写界深度はf/4.0で約4cm、f/8.0まで絞ると約8cmあるから、正対の問題ではなく、像面湾曲だと思う。僕の18-200mmが外れ玉なのかもしれないが、周辺まで美味しい筈のDXで絞ってこれだと、ちょっとシリアスな撮影には使いたくない玉である。SIGMAも、この中望遠域は余り得意でないと見える。

  • 120mm・Corner・f/4.0


 テレ端である。SIGMAは70mmまでしかないので、換算105mmとなっている。この結果は、SIGMAが明らかに優れていて、多少差が開いて18-200mm、僅差で24-120mm f/4Gである。

  • 120mm・Corner・f/8.0


 絞ると、24-120mm f/4Gと18-200mmの差は逆転する。だが、SIGMAの方がスッキリとした像で圧倒的に良い。SIGMAは、中望遠はイマイチだが、テレ端は頑張ったという印象だ。
 続いて歪曲収差だが、前エントリで24-120mmは広角が樽で途中から糸巻と述べた。この傾向は勿論変わらないが、18-200mmと改めて比べてみると、広角の樽はかなりマシだと思われる。判りにくいかもしれないが、新聞紙を撮ったときの全体像を載せておく。概ねの傾向はこれで判るだろう。18-200mmの方が明らかに歪曲が強い。絶対値も重要だが、比較も重要だなと再確認させられた。


 それで、最後に18-200mmの標準〜中望遠域の像面湾曲問題(?)である。これを見るのが手っ取り早い。

  • Field curvature: AF-S Nikkor 18-200mm f/3.5-5.6G @50mm


 これは換算75mm f/4.8で撮ったものを、それぞれのエリアをほぼ均等に抽出したものだが、ボケ方はほぼ同じなので、正対出来ていなかったのでは無いことが判る。また、収差というよりも、色が抜けてエッジがとろけているので、どちらかと言うとアウトフォーカスしている感じであり、このアウトフォーカスしている感は、中心からの距離に比例して強くなっている。なので、この写りの悪さは、僕は像面湾曲では無いかと想像している。上にも書いたが、換算51mmでもほぼ同様の結果であった。一方で換算27mmのテストでは、ここまでの湾曲は発生していない。どうやら、僕のが外れ個体で無い限りは、この玉の標準〜中望遠レンジは、少なくとも近距離の被写体において像面湾曲が発生し、ピント面がお椀型に歪む様だ。像面湾曲そのものは、EFの24-70mm f/2.8Lみたいなプライムレンズでも発生している、よくある現象であるが、画質を落とすのは間違いない。今回の様な近距離の被写体では無く、無限遠でどうなのかは一度検証見てみたいものだが、仮に無限遠では解消されていたとしても、標準から中望遠域は近距離の被写体に僕は使うから、このレンズに旅行用の便利レンズ以上の価値を見出せないのは変わらないだろう。そして、一方の24-120mm f/4Gは極めてうまく像面湾曲をコントロールできていると思う。ほぼ全域で安定した周辺の像を結んでいた。
 前のエントリでは、高価でズームレンジも狭い24-70mm f/2.8なんていうプライムレンズと比較したので、ちょっと差があるなと思ってしまったが、高倍率やDXの標準ズームと比べるなら、24-120mm f/4Gはそれを十分上回る性能を保持していると確認した。16-35mm f/4Gが良かっただけに、最初の期待が高過ぎた様だ。同時期の新商品である28-300mmの評判は良いが、さてその原型と思われる18-200mmと比べて性能はどれだけ上げてきているか。また、FXのセンサーの許容度の高さはどこまでDXと比べてレンズの収差にやさしいか。その辺りは要注目で、24-120mmと比べる人も多そうだが、高倍率はやっぱりどこかに無理がでるし、28-300mmの方が良くなる要素はワイ端が28mmな事くらいなので、今回の結果からしても絶対値としては24-120mmの方が良いのだろうと想像する。
 また、個人的にはDXの18-200mmと比べて、24-120mmは十分な性能差があるので、デカ重のFX使うならDXより良い絵を撮りたいし、その意味でこのレンズは買いだと思っている。ただ、発売直後の高値の時に飛びついてすぐ撮りに行くか、ちょっと待って値がこなれた頃に買うかは個人の価値観だと思うけれども。
 さて、今日は天気も良いし撮りに出かけるか。こういうテスト的撮影は、一度やっとくとレンズの癖がよく判るので、実際撮る時の参考になる。暇が有ったらたまにテストしておくのも悪くない。