EPON AF-302 + 重量カーボンシャフト

 以前、遠藤製作所のアイアン製作で迷っているとエントリを書いたが、何とこのオタクなエントリに、同じ遠藤のアイアンを作っているとコメントを頂いたので、続編を認めることとする。
○2010-03-24 ALDILA NV Pro 105
 遠藤製作所というのはゴルフクラブOEMメーカーで、もともとは新潟県燕市にある洋食器メーカーだったが、その鍛造技術を活かして鍛造ゴルフヘッド製造に進出している。この遠藤製作所が、その技術力を顧客にアピールする為か、EPONという変な名前の自社ブランドを作っていて、このブランドの名前はともかく、品質は確かに高いのである。僕が前に使っていた、キャロウェイのLegacyというアイアンも遠藤製作所のOEM製作だったが、設計は良く出来たクラブだったけど、製造品質という意味では、ネックの長さもバラバラだったし、ロフトもライもスペック通りとは行かず、普通という感じであった。一方のEPONは仕上げも良く、ヘッドの重量もネックの長さもロフトも均一である。同じ所が作っていても、手の掛け方で大分質が変わると見える。重量のバラツキは、数グラムであれば目をつぶれるが、ネックの長さのバラツキはアイアンだと影響が無視できない。番手によって、重心位置も変わるし、シャフトのしなりも変わってきてしまうのである。

  • EPON AF-302。ミズノやタイトリストのアイアンの美しさが好きな人にはささるんじゃ無かろうか。

 この品質の良さと、ヘッドだけで売っていて、自由に好みのシャフトと組み合わせられることに惹かれ、EPONでアイアンを作ることに決めてはいたが、具体的には悩んだ末、AF-302というモデルを選んだ。EPONの4つのモデルの中では、難しい方から2番目である。シャフトはアメリカから個人輸入した、アルディラNV Pro 105を組み合わせ、組み立てを関西のゴルフクラブ工房に依頼した。大阪と東京両方に住んでたけど、職人的な仕事をお願いするなら、東京より関西という気がする。こういった、クラフトマンの工房は、最近よく見かける様になっていて、都心でもゴルフショップよりゴルフクラブ工房の方が目に付く位である。市販の大手メーカーのクラブに満足せず、いじっている人がそれだけ多いのだろう。
 組み上げてみると、5番アイアンで411gになった。一般的な軽量スチールのモデルと比べると、10-15g重く、重量スチールのモデルと比べると約15g軽いので、ほぼ中間という感じである。だが、えらい硬い。前使っていた、GS95やKBS90といったシャフトと比べると、木刀を振っている様だ。アメリカのカーボンシャフトメーカーは、日本の三大メーカー(グラファイトデザイン、三菱レーヨン、フジクラ)と比べて安価であるが、力持ち(×ゴリラ)用の硬いシャフトが多い。振動数も5番アイアンで324まで出ている。感じ的には、ダイナミックゴールドという重量スチールの代表モデルより硬く、島田シャフトのK's Tourという硬いシャフトがあるが、それに近いフィーリングである。

  • シャフトはALDILA。グリーンのシャフトというのは余り他に無いかも。

 組み上げた当初は、GS95みたいな、ぼよーんとしたシャフトに慣れていたので、「あちゃー失敗かー」と苦戦したが、使っている内に、徐々に打てる様になってきた。重量カーボンだと、ディアマナ・サンプが日本では最もポピュラーだと思うが、これは単なるカチンコチンの炭素の棒で、原発の制御棒にでも突っ込んどけ、という硬さだ。それと比べると、アルディラは多少は易しいモデルだと感じる。調子が良くて、ドライバーのヘッドスピードで、47m/s位が出てる時だと、インパクトゾーンで鋭く速いしなりが出てきて、なかなか気持ち良い。同じアルディラの、VOODOOというユーティリティシャフトは、タイトリストの909Hに装着したのを使っていて、これはどろーんとした粘りのあるシャフトだった。それと比べるとかなりフィーリングは違っていて、随分シャープなシャフトである。メーカー公表では、中元調子とのことで、確かに先端はピンピンに硬いが、元調子のシャフトの粘りは余り感じず、どちらかというと走るシャフトの様である。この鋭いしなりが出たときは、結構飛距離も出る。前は7番アイアンで165ヤードだったが、1-2度ロフトが寝て、シャフトが0.25インチ短くなり、軟鉄鍛造フェースで反発も落ち、飛ばなくなる要素満載なのに、5ヤード前後しか飛距離が落ちていない。しかも、確実に前のAF-502やLegacyと比べると止まりやすい。特にLegacyは、よくアイアンショットがグリーンにキャリーしても、ボールはゴロゴロ転がって、グリーン奥ということが多かったが、AF-302だときっちり止まっていることが増えた。

  • 302 VS 502の5番アイアン比較。ソールが厚い方が深重心でアイアンは簡単になる。手前の302がやや薄いが、これでも三浦のCB-2006よりは厚く、薄さは感じない。

 ただ、いいことばっかりでは無くて、試打した時はAF-502という、もう一つ簡単なモデルと大差は無いかなと思っていたが、実戦で使ってみると、やっぱり芯は小さくて、難しさを感じる。AF-502は、ミスの許容度と、プレイヤーの意思をきっちりボールに伝えられる操作性が両立しているアイアンだったが、AF-302はかなり操作性に振って、研ぎ澄ませた感じである。両方とも、ユーティリティ的に左右どこに当たっても距離のブレやサイドスピンが大きく変わらない、という最近のアイアンじゃないが、ただ、昔のマッスルバックみたいに、特定の打ち込む打ち方をしないとヘロヘロ球しか出ない程シビアでも無い。AF-302は払い打ってもちゃんとしたボールが出る。ただ、芯が狭いのである。

  • アイアンはソールとバックフェースが機能を語る。トゥとヒールに厚みを作って芯を広げた502と、真ん中を厚くして芯の打感を向上させた302。

 芯が狭いと言っても、僕みたいな技術レベルでは、左右のオフセンターヒットより、そもそもフェース面がスクエアに入っていないミスの方が多い訳で、それはどんなアイアンでも救済はしてくれない。そういうミスが出た時は、もしかしたら、ボールが上がって飛ぶ簡単アイアンの方がむしろミスの幅は大きくなるかもしれない。そんな事もあって、僕は今時点ではAF-302の芯の狭さは余り気にしていない。その分止まるし、また個人的にはAF-302の様な、トップブレードが薄くて直線の方が、打ち込んでスパッと入るイメージが湧きやすい。こういう上からのルックスは、一般には難しく見えるので、好きじゃない人も多いと思うが、僕はこういうツンデレが好みである。

  • 緑のシャフトに紺のグリップ。芝の上に置くと保護色になる仕様である。しばしば、放し飼い寸前になる。

 最後にもう一つ、AF-302を暫く使ってきたが、アプローチウェッジとの繋がりが悪くなってきた。僕のアプローチウェッジ、はなるべく簡単なモデルという観点で、グースがあって大きめのフォーティーンMT-28J-SPEC2である。アイアンをAF-302に変えて、若干打ち込むスイングになり、またAF-302がグースが小さく小ぶりなので、アイアンのイメージで打つとウェッジが厚く入る様になってしまった。出っ歯のサンドウェッジはそういうミスが出ないので、クラブの問題だろう。そんな訳で、アプローチウェッジの新しいヘッドが我が家にごろんとやってきた。ゴルフをする人は多けれど、ゴルフクラブというのは、棒が刺さっている状態で買うのが通常一般の慣習だと思われ、ヘッドだけ来る時点で、何かおかしな世界に来た気もしないでもない。

  • スクラッチゴルフ!