DQN、大企業と出会う。

アイスケースに入って写真投稿して炎上的なDQNのニュースが続いた。知る限り、ローソン→ミニストップバーガーキング→ほっともっと→ミニストップブロンコビリー丸源ラーメンという、ぷよぷよなら連鎖で一発勝利している位の華麗なる血脈である。これに関して、ネットから可視化されにくい低学歴の世界が拡がってるとか、その世界を社会とを切り離さないでとかの関連エントリを読んでたけど、その中で一番心に残ったフレーズが、これ。

同じ場所でけっこうな期間にわたって店をかまえていて、彼らが高校生のころから見てたりもするんだけど、昔だったら、男は肉体労働、女は水商売っていう上がりのかたちがあったはずなんだけど、受け皿のほうが少ないせいか「どうやって生活してんだろこいつら」と思うようなのが増えてる。
■出典:「うちら」の世界/24時間残念営業

実感としてはそうなのだろう。でも、データで見ると、若年失業率は横ばい、ないしは少し改善してすらいる。
○世代別失業率推移

■出典:総務省統計局「労働力調査詳細集計」
 この失業率における失業者の定義は、概ね求職者なので、働く意思がずっと無いと統計には反映されない。なら働く意思のない統計の枠外のニートは増えているのかと言えば、こちらも別の統計上では横ばいか、長期で見れば減少トレンドである。
○世代別ニート

■出典:総務省統計局「労働力調査
 よく見ると30代の高齢ニートは横ばいだが、25才以下は顕著に減少傾向なのである。ただ、職の中味はよく判らない。相当数のブラック企業が混じっている様な気もするが、昔からマグロ漁船とかブラック企業は有った訳で、ブラック企業が減ったのか増えたのかは良く判らない所だ。ま、雑に言えば文句を言わなければ働き口はあるのが現代であって、それは経済の低迷以上に少子化が進んだから、若年労働力は相対的には稀少資源になりつつあるから、と見ていいだろう。
 ついで、失業率は変わってない一方で、肉体労働という受け皿は縮小したのだろうか。若年層の職種別の分散は、多分何か統計を分析すれば判るんだろうけど、簡単には見つからなかった。でも、ぱっと見つかったこのグラフを見るだけで、肉体労働の職種の有効求人倍率が非常に高い事から、肉体労働という受け皿は縮小したかもしれないが、労働者全般に肉体労働を忌避している為、肉体労働に就きたい人がそれ以上に縮小した事が判る。

■出典:賃金上がらず若者敬遠、コンビニに人材流出…深刻な建設作業員不足/MSN産経ニュースWEST
 そう、「どうやって生活してんだろこいつら」という若者は、全体として見れば、働いてないんじゃなくて、肉体労働を嫌って肉体労働じゃない職種に就いているのである。それは、例えばコンビニとか外食の店員とか。文句言わなければ働き口があるんじゃなくて、ある程度は働き口に文句付けてるのである。今のDQNの上がりの形は、肉体労働じゃなくて、大手が多いチェーンオペレーション業態の末端店員なのだ。チェーンオペレーション業態は、肉体労働ほど徒弟制度で厳しく若者を指導するという事は無いだろうし、親方が睨みを利かせて、若者がふざけてたり遊んでたりしたらすぐ見つけてシバく事も無いだろうから、そらアイスケースに入ってウェーイみたいな店員も居るわって話である。
 この現象は、少し抽象度を上げると、建設業みたいなモノを作る第二次産業から、モノやサービスを売る第三次産業に産業構造全般がシフトし続けている流れの一つの末端である。第三次産業は、第二次産業ほどのペースでは生産性向上が難しいし(コンビニの店員が長い経験積んでも倍のスピードで客をさばける様にはならないし、機械化も難しい)、差別性の源泉が商品からブランドや接客みたいなソフト的なものの比重が強まるから(コーヒーチェーン間でコーヒー自体には余り差は無い)、第三次産業は生産性の向上や生産性以前の投入資源の価格競争力、或いは差別性等を実現する前提として、規模がより重要になる。似たようなものを売るなら、規模によってコスト下げないと勝負にならないし、似た存在にならない様に、ブランド投資や従業員接客教育を行うにはそれなりの規模が無いと無理だからだ。だから、差別性に乏しい町の普通の寿司屋は潰れて、あきんどスシローかっぱ寿司に入れ替わるんだけど、結果として規模の大きな全国チェーンは、雇用吸収力も大きいため、その成長の過程でDQNを末端で雇いだす事になる。そう、ここがリスクやクレームに超敏感で厳格な社会のルールの権化みたいなニッポンの大企業と、うちらの論理しか知らないDQNが出会う不幸な場所なのだ。そして、スタバみたいな厳選した採用と、みっちりした教育訓練を、こういったニッポンの大企業の殆どは出来ない為、お客様と、ネット民と、濡れた子猫の様に可哀想なお客様相談室のオッサンの前に、ちょっと訓練されただけのDQNが解き放たれる事になる。
 最後少し脱線だけど、1-2年前だったか、「なぜ、セブンでバイトをすると3カ月で経営学を語れるのか?」なるしょーも無い題の本が出ていた。勇ましい題名ではあるが、ここんとこの状況を踏まえると、DQNがセブンのバイトを3ヶ月しても、ウェーイ!とやったらクビになった武勇伝を語る位が関の山では無いかと思う。でも、よく見てみると、ぽこぽこと続いた事件の中にコンビニ最大手であるセブンイレブンが入っていない。セブンに対しては当に恐るべし。もしかしたら、セブンの従業員教育は少し違ってて、3ヶ月働いたら、アイスケースに入らなくなるどころか、本当に経営学を琵琶法師の様に語り出すのかもしれない。であるなら、日本は徴兵制とか強制介護ボランティアとか下らない議論は止めて、国民皆セブンバイト制を導入して、良き資質を涵養すればいいんじゃないですかね。
なぜ、セブンでバイトをすると3カ月で経営学を語れるのか?―鈴木敏文の「不況に勝つ仕事術」40 (プレジデントブックス)